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Windowsに取って代わる?

1999年08月06日 00時00分更新

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 Windows 98のSecond Editonの登場は、国内で来月、今月末ぐらいにはメーカーからプリインストール機が登場する予定だという。しかし、いくつかの調査によると、いまだにWindows 95は売れており、特に企業向け市場では、まだ、根強い人気があるという。たしかに、いきなり「Windows 98の、Windows 95よりもよいところを3つ挙げろ」といわれれば、うーんとうなってしまうように、実際のところ、アップデートの必要を強く感じる人は、それほど多くなく、企業向け市場は、できれば大きくシステムを変えたくないので保守的に成らざるを得ないので、こうした結果となるのだろう。逆に見て、Windows 95が、少なくとも多くのPCユーザーから見て平均的な満足を与えるものなので、Windows 98がよほど魅力的でないと、Windows 95を置き換えることができないともいえる。たとえば値段がすごく安いとかね。

 さて前回は、低価格PCというトレンドから低価格OSが必要になるという話をした。Linuxコミュニティやその周辺(の個人)とマスコミの論調として、「LinuxがWindowsに換わって主流のOSになる/なってほしい」というものが多く見受けられる。この意見にとって、低価格PCが低価格OSを要求するというのは、「追い風」的ではある。

 個人の意見ということなら、別にどうこういう筋合いのものでもない。また、この意見の背後には、「アンチマイクロソフト」という感情が働いていることも分かる。しかし、この意見に賛成しかねる部分もある。

 「Windowsに換わる」とは、少なくとも現在使われているWindowsの大部分を置き換えるということで、現在と将来のWindowsユーザーが使うOSになるということだ。

 そうなったときに、Linux(もしくは、それ以外のWindowsに換わろうとするOS)は、Windowsと同じようにユーザーから要望を受け、そして、それに応じた機能を取り込んで行かねばならないだろう。それは、Plug&Playのようにボードをさせば、自動的に設定が行なわれ、インターネットに簡単に接続できて、GUIを持ち、マルチメディア対応している。きっと、マウスでアイコンをクリックすると、プログラムが起動するだろう。でも、これって、Windowsと同じじゃありません?

 現在のユーザーの最大公約数的な要望が取り入れられたのがWindowsで、アイコンを選択するのに右ボタンか左ボタンか、真ん中のボタンなのかといった細かい作法を除けば、こうした要望を取り入れたOSは、いまのところはWindowsの「ようなもの」にならないのではないか。だとするとWindowsに取って代わることは、Windowsになるということなのではないでしょうか。なんかミイラ取りがミイラになったというか、米国のテレビドラマ「TwinPeeks」の最終回というか、へんな感じですねぇ。

 そういえば、WindowsはMacintoshをマネしたということが一時、盛んに言われてましたけど、よくみれば、細かいデザインを除いて、両者はよく似ています(実際には、この源流としてXeroxのParcで開発されたAltoがあるわけですが……)。

 そういう目でLinuxを見てみると、そうした傾向がないわけでもない。Windows 95にそっくりのウィンドウマネージャとか、Windowsのアプリケーションとよく似ているLinux上のソフトとか(あっ、別にこれらのソフトが悪いとか、ヘンだといっているわけではなですよ。似ているというのはある意味ユーザーにとってはメリットなのですから)。

 どうして、傾向が似ちゃうのかというと、きっとみんな同じ「パラダイム」に載っちゃっているからなんでしょうね。何かいい「お手本」があると、まったく違う「お手本」を作り出すには、ちょっとした天才的な作業が必要なんで、あとに続く者は、そのお手本を否定するか肯定するかってことになって、結局「お手本」の枠からは逃れられないってことでしょうか。何が広く使われるにせよ、作る側も使う側も同じ「パラダイム」を共有していたままだと、結局同じになっちゃうってこと。

 だから、そう考えたときに、LinuxもWindowsになっちゃっていいの? とささやかな疑問を感じるわけなのです。じゃ、どーするのよ? って疑問は当然あると思いますが、基本的には、「自分が使いたいものを使う/使えるようにする」ってことですかねぇ(なんと平凡な結論! でも、パラダイム変えられるような天才じゃないもんで許してほしいなぁ)。

(塩田紳二)

塩田紳二(しおたしんじ)

プロフィール
 雑誌編集者、電機メーカー勤務を経てフリーライターとなる。月刊アスキー、月刊インターネットアスキーなどの雑誌連載や、Web雑誌(ASCII24 Intel/MS Espresso)の連載などで執筆中。1961年生れ。一児の父。最近の趣味は、革細工。といっても、通信教育のコースを始めただけ。目的は究極のモバイル鞄づくりなのだが。

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