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安全で美味しい「Linux山」

1999年08月05日 13時51分更新

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 今回はタイトルの由来について説明しようと思います。Linuxをはじめとするオープンソースムーブメントというのは、とても独特で、これまでのソフトウェア技術の考え方とは大きくかけ離れています。そこでなにかほかの社会現象を持ってきてアナロジーを行ない、理解の足しにしようというワケです。かえって分かりにくくなるという声もありますが……

 さてイキナリですがLinuxを豊穣(ほうじょう)な山に喩えてみましょう。もちろんこの山を作った山の神々はLinusさんやStallmanさんをはじめとするオープンソースの巨人たちです。この山は日照量も多く、土壌中のミネラル分のバランスもよく、保水力もあり、さらには降水量もちょうどよい具合で気温も年中春のようです。当然草木は茂り、木の実や果実がたわわになり、池や川には魚がピチピチ、野鳥もいるし野生の猪だっています。木陰には美味しい茸や山菜も。

 この山、面積もかなり広くだれでも入山して適当に食べ物を取ってよいのです。いくら取っても土地生産性のほうが高いので問題なし。さて、食料は入手可能ですからこの山の周辺の人々は飢えることはありません。しかし魚をとるには釣りの腕前が必要ですし、木の実だって高いところにあるものを取るにはかなりの技術と労力が必要になります。さらに猪に至っては美味ではありますが、狩りは非常に危険で、下手をすればこちらが怪我をしてしまいます。さらに肉を加工するにも一苦労です。しかしスキルの高い狩人達にとっては、まさに天国。いつだって美味しいものをお腹一杯食べられます。でも狩や釣りの上手でない人はあまり食べられません。

 ある狩人が考えました。「自分じゃ猪狩りができない人の代わりに、私がとってあげよう。ついでにステーキのような精肉に加工してあげよう。そのかわり手間賃はちょっとだけ払ってね」。これが初期のディストリビュータ。Slack精肉店。

 ある街の人が考えました。「猪ステーキも野趣があって美味しいけど、やっぱり猪鍋だよね。よし! 猪鍋レストランを開業しよう!」。これは最近のディストリビューションですね。赤帽猪鍋店、猪ソーセージの店SuSE、和洋中折衷のTurbo飯店、フレンチのMandrake。またお店のほかにお料理のクラブもあります。猪照焼きとVineを楽しむ会、和食料理クラブPlamo、料理の鉄人を目指す会Debian etc。各グループにより、それぞれの味付けがあるわけです。

 自分の家で自炊する人もいます。料理の腕前が高ければ、わざわざ外に食べに行かなくてもOKです。さらには美味しいお料理やご馳走のデリバリサービスをしてくれる人や、グルメガイドをしてくれる人、これはSI'erさんたちかな? もちろん、お客様も美味しいLinux山料理に舌鼓。

 というわけでLinux山では自分でとるのはもちろんOKですが、ただ単に食べたい人もOKです。みんなそれぞれのスキルに応じて楽しめるわけですね。

 まだまだ野趣に富んだ、田舎料理の多いLinux山ではありますが、なにしろ素材自体が美味しいし、産地も製造方法も明らかなので安心です。それに最近はメキシカンのGNOMEやドイツ料理のKDE等、洗練された料理も多くなって来たというハナシです。

 一方のM$遊園地ですが、こちらはもれなく入場料の支払いの必要があります。遊園地に入るだけでかなりの出費になってしまうのです。ハデなアトラクションも多くて見た目には楽しげです。しかしアトラクションももちろん有料で決して安くはありません。さらに時々脱線事故が起こり怪我人が後を絶ちません。お料理もカタログで見るときれいなものばかり。ただちょっと高く、実際に取ってみるとレトルトや冷凍食品の解凍ものばかり、さらに材料も原産地も不明です。どんな添加物が入っているか分かりゃしません。少なくとも化学調味量はバリバリ使ってあります。それに揚げ物の油もあまりよくないようです。添加物の影響で青くなって死んでしまうこともあるという恐い噂もあります。

 やっぱり安全で美味しいものならLinux山でしょ?

(窪田 敏之)

窪田 敏之/くぼた としゆき

プロフィール
'84年年東北大学歯学部卒。その後、東京医科歯科大学博士号取得。大学院在学中、五橋研究所を設立する。'93年CD-ROM Shop Laser5を設立。国内初のLinuxパッケージを発売する。'95年、Laser5出版局から、国内初のLinux専門誌「LinuxJapan」を創刊。現在、五橋研究所取締役社長。

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