マイクロソフトの次期OSのキーワードは「シンプル」だという(http://cnet.sphere.ne.jp/News/1999/Item/990713-6.html)。この次期OSというのは、現在のWindows 98の直接後継に当たり、Windows 98カーネルを使うコードネーム「Millennium」と呼ばれるOSのことだ。Windows 98の後継でシンプルはないだろう、という意見もあるかと思う。次世代OSのキーワードとしてはなーんか、違っているっていうか、間違いというより、実際の動向を反映してはいるんだけど、表現がいかにもマイクロソフト的って感じ。つまり、「現実の方向との類似性を感じるものの、マイクロソフトの基本スタンスから外れはしない」ってところだろうか。
世間一般の動向としては、今のPC業界のキーワードは、「低価格化」、「低コスト化」でしょう。やれ399ドルだ、299ドルだといった低価格のパソコンが登場し、いまや、こうした「低価格PC」のほうが主流ともいえる。そこで問題になるのが、パソコンの原価だ。これには、部品代や製造費といったものに加え、OS、つまりWindowsのライセンス料金も含まれる。マイクロソフトとの契約にもよるが、数10ドル程度(85ドルという具体的な金額を挙げている記事もありますが)という価格で、これは、ほかの主要な部品と比較してもかなり高価である。それに、多くの部品メーカーは、こうした低価格PC市場が成長してきたことに対応し、従来の性能重視から価格重視の部品へとシフトを始めている。高いと言われたインテルのCPUでさえ、安くなった。そうなると、PCの原価の中で価格的に目立つのが、OSのコスト。
また、PCの価格が安くなると、プロバイダなどとの長期にわたる利用契約と引き替えに、パソコン自体を無料にすることも不可能ではなくなる。つまり携帯電話などと一緒である。
そうなると、メーカーはさらにコストを切りつめる必要があり、さらにOSのコストが問題化することになる。もっとも問題なのは、OSに関しては競合がない状態に近かったので、競争による価格低下がないことである。インテルのCPUが安くなったのは、AMDやCyrixとの競争の結果である。
いくつかのメーカーは、インターネットアクセスという点に着目して他のOSを物色しはじめたのである。そこで登場するのがLinux(もちろん、BeOSを採用しているメーカーもある)。少なくともLinuxを使えば、マイクロソフトほどのライセンス料は必要なく、最低限のアプリケーションをそろえて、Webを見ることができて、メールが使える環境を作ることができる(もちろん、英語などの1バイト文字圏での話)。
こうした無料PCという動きには、IBMやDell Computer、Gateway 2000といった大手メーカーもいずれ参入するだろうし、すでに米国の大手PCショップチェーンは、無料パソコンの扱いを開始している。
そう考えると、やはり次世代OSのキーワードは、「低コスト」もしくは「無料」ってことになる。いままで、パソコンの低価格化や無料化について、マイクロソフトは、無関係な地位にいたようだが、そろそろ、そういうわけにもいかなくなってきたわけだ。そこで登場するのが、いかにも「低コスト」って意味を含みそうな「シンプル」というキーワードである。
個人的には、いままでの多くの制約から自由になれるという意味も含めて、次世代OSのキーワードは「Free」だと思う。これは、流行る。なぜなら、アメリカ人は、「Free」という単語が大好きなのである。日本人が「高級」や「特別」に弱いのと同様、アメリカ人は「Free」には弱いのである。
(塩田紳二)