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Linuxのウソ(1)――Linuxは「タダ」?

1999年07月13日 00時00分更新

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 「LinuxはフリーなOS」だと言われる。
 英語の「free」という単語にはいろいろな意味があるが、「フリーソフト」という言い方がされるとき、それは多くの場合、「無料」あるは「タダ」という意味で使われているようだ。一般の新聞でLinuxが紹介されるときも、見出しは「無料OSのリナックス……うんぬん」というふうに、「free」は「無料」として捉えられている。
 果たして本当だろうか?

 確かに、Linuxを使うときに、OSの使用ライセンス料として誰かにお金を請求されることはない。店頭で売られている、「Red Hat Linux」や「TurboLinux」などのディストリビューション製品も、マニュアルやサポート、流通コスト、付随する関連ソフトウェアのライセンス料などによって「値段」がつけられているが、そこに含まれているLinuxカーネルの使用料は無料である。だから、「Red Hat Linux」や「TurboLinux」は、パッケージ製品を店頭で販売しながらも、それぞれインターネット上で公開もされているし(ただし、フォントや関連ソフトウェアなどの有料ライセンスのものを除いた形ではあるが)、雑誌や書籍の付録として添付されていたりするのである。

 しかし、厳密なことを言えば、Linuxが無料なのは、あくまでも「結果的に」であって、どこかに「無料(=タダ)でなければならない」と決められているというわけではない。しかも、もともと、Linuxの開発者であるLinus氏が「結果的に無料ということになるライセンス」の下で配布しているのはLinuxカーネルだけである。それをOSとして機能させるためには、コマンドやライブラリなどさまざまなものを付加する必要があるが、その「付加するもの」のライセンスについては、各ディストリビューションベンダの裁量の範囲である。

 現在のところ、どのディストリビューションベンダも、Linuxカーネルのライセンスと、そこに込められたLinus氏の意志を尊重して、LinuxディストリビューションそのものもLinuxカーネルと同じ(または同様の)ライセンスで配布しているが、これはあくまでも「紳士協定」という面が強いのである。したがって、Linuxカーネルに有料ライセンスのコマンドやライブラリを組み合わせて独自の「OS」を作ることは可能で、今後、使用ライセンスが有料の「Linux(ベースのOS環境)」が登場しないとも限らない(もちろんその場合も、Linuxカーネルは「結果的に無料で配布されることになるライセンス」で保護されなければならないし、名前としてLinuxという商標を使えるかどうかは分からないが)。

 というわけなので、「Linuxはフリー」というときに、その「フリー」を「無料」というイメージだけで捉えてしまうのは、その本来の意味を狭めてしまっていることになり、正しくない。Linuxの文脈で語られる「free」は「freedom」の「free」であり、それをあえてそのまま訳すなら、それは「無料」ではなくて「自由」ということになる(とはいえ、新聞の見出しに「自由OS、Linux」と書かれていても、それはそれで妙な気がするが)。

 では、「Linuxは自由=何をしもよい」という捉え方でいいのか? 実はこれも正しくない。というより、やはり間違っていると言わざるをえない。それについては、回を改めて考えてみることにしよう。

「Linuxのウソ」というタイトルで、「Linuxそのもののウソ」という内容を想像された方、ゴメンナサイ。ここでは「Linuxについてよく言われるフレーズの『ウソ』」という意味で使っています。

(風穴江)

風穴 江/かざあな こう

プロフィール

風穴江

「月刊スーパーアスキー」誌(1998年7月号で休刊)にて1993年ごろからLinux連載を担当。1998年3月からフリーに。1999年4月1日からは「月刊Linux Japan」(LASER5出版局)の編集長も務める(エイプリルフールではない)。1967年、青森県生まれ。青森県立八戸高校卒。

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