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“Free on Free”が開催

フリーソフトウェア界のキーパーソンが集結

1999年06月22日 00時00分更新

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フリーなOS上で動作するフリーソフトウェアについて語る会“Free on Free”(Free on Free プログラム委員主催)が19日、(株)アスキー本社のセミナールームを借りて開催された。これは、“フリーなOSのフリーなアプリケーションを熱く語る会”として実施されたもの。発表者としてMewやFree Wnnなどの開発者を始めとする17人が招かれ、各ソフトウェアの特徴や今後の開発方針などについて語られた。

まず最初に、基調講演として富士通研究所 常任顧問の和田英一氏がスピーチ。こだわりある小型キーボード“Happy Hacking Keyboard”やフリーなベクトルフォント“和田研フォント”を開発したことで有名な同氏は「日本初のハッカー」と紹介された。

和田英一氏
和田英一氏

同氏の“Know thyself”と題された講演では、まず、氏が41年前に計算機の世界に入ることになったきっかけを説明。「たまたま、当時、私の大学の研究室の指導教官であった高橋秀俊氏が、研究テーマを計算機としたのがきっかけだった。」

その後、教官であった高橋氏が書いた昭和40年代の論文を用いて説明。「これからの計算機システムの指針としてまとめられているこの論文には、“人間はきまぐれである”、“人間は不注意である”、“人間は単調を嫌う”などという人間の特性が挙げられている。“計算機はこうした機嫌を損なわず、また人間の欠点を補うようにすることだ”とまとめられている」とし、今も昔もコンピュータは本質的には変わらないことを説明した。

最後に「私にとってコンピュータは人間を知る鏡だった。これがなかったら人間のことをこれほどわからなかったのではないか」と締めくくった。

“Free on Free”の参加資格は“フリーなOSで動くフリーなアプリケーションを愛していること”、参加ルールは“他のフリーソフトウェアをけなしてはならない”
“Free on Free”の参加資格は“フリーなOSで動くフリーなアプリケーションを愛していること”、参加ルールは“他のフリーソフトウェアをけなしてはならない”

続いて、アスキー社内で使用することを目的に開発が進められていたpTeXの歴史、PhotoShopに対抗しうる画像レタッチソフトとして人気のGIMP(ぎんぷ)が、ver 1.2の今年度中の公開が難しいこと、また、日本語入力変換システムFreeWnnが、Wnnから派生した経緯などがそれぞれの講演者により語られた。

半田剣一氏
半田剣一氏

また、エディターNEmacs(エヌイーマックス)、Muleの開発者として有名な電子総合研究所の半田剣一氏の講演では、「Richard Stallmanと共同で開発してきたが、EmacsとNEmacsの絡みや、著作権の問題など、なかなか苦労させられることが多かった」とこれまでの開発経緯を説明。「Muleで拡張したソースコードの著作権は電総研にあり、それはフリーで公開できないという問題が発生した。その後、電総研がFSFに対して特別な配布許可を与えるということで結着したが、そのため、現在のMuleの配布元はFSFであるという、何とも不思議な状態」と語った。また、今後の予定としては、Egg Ver.4になった時点で、Mule 3.1のリリースを検討したいとコメントした。

山本和彦氏
山本和彦氏

このほか、主催者であり、Mewの開発者でもある(株)インターネットイニシアティブの山本和彦氏によるMewの話などが続いた。

渡邊剛氏
渡邊剛氏

会の後半では、X Window System関連の話が続いた。画面上にキャラクターなどを配置できるカスタマイズユーティリティー『X multi』を開発した日本イソターネット協会の渡邊剛氏の講演では、「X-multi“実用性絶無”」と紹介され、会場を爆笑の渦に巻きこんだ。一方で同氏は「確かに、このツールはCPUパワーばかり使い、利点や実用性はほとんどない。しかし考えようによっては、無駄なツールが出てきたということは、プログラマーの裾野が広がったともいえるのではないか」と述べ、拍手喝采を浴びていた。

今回は会場の都合で150人限定となったが、Webでの申し込みは約24時間で締め切られたという。この会の主催者であり、Mewの開発者でもある山本和彦氏は、「基本的には、自分が楽しいと思えることをやるだけ。これだけ反響があるなら、今後も続けて開催していきたいと思う。また、オムロンソフトウェアさんが会場を提供していただけるという話もあるので、関西版も実現できるのでは」とコメントした。

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