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【風穴 江のLinux Expo'99 report vol.1】Linuxersの、Linuxersによる、Linuxersのためのイベント“Linux Expo'99”が開幕

1999年05月21日 00時00分更新

文● 風穴 江

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20日から本格的に開幕

20日(現地時間)、Linuxをテーマにしたイベントの草分けとして知られる“Linux Expo'99”が、米Red Hat Software社のお膝元(の隣町)、ノースカロライナ州のラーレイ(Raleigh)で本格的に開幕した。

このイベントは、今回で第5回の開催を数える。18日からプレレジストレーション(事前登録)とウェルカムレセプション(オープニングパーティー)が実施され、19日には、テクニカルチュートリアルが開催されていた。しかし、目玉ともいえる展示会がこの20日からオープンし、“KICK OFF KEYNOTE”(基調講演)もこの日に設定されていることから、本格的な開幕は今日(20日)と言っていいだろう。

会場となったRaleigh Convention and Conference Centerの入口

素朴なアメリカを感じさせる街、ラーレイ

会場となった“Raleigh Convention and Conference Center(RCCC)”は、ラーレイのダウンタウンにある。ここには、ノースカロライナ州の州議会議事堂などがある。日本人の感覚で地図を見るかぎり、ノースカロライナの“中心地”、東京でいえば、新宿のようなところを想像してしまう。しかし、オフィスを収容するような高層ビルは林立しているものの、繁華街といえるところは皆無。アメリカの街にはよくあるような、のんびりとした雰囲気が漂っている。

近くには大学も複数あって、人口もそれなりにあるはずなのだが、妙に人影が少ないような気がするのは、人込みで溢れる東京の新宿や渋谷を見すぎているせいなのだろうか。

Red Hat Softwareの本社がある隣町のDurhamには、米IBM社の研究所などもあって、そちらもアメリカの中ではそれなりの規模の街らしい。それでも、やはりラーレイと五十歩百歩だと、実際に足を運んだ日本人の知り合いから聞いた。日本人を見掛けることも多い西海岸の街に比べれば、やはり、良くも悪くも“アメリカ”という国を強く感じさせる。とはいえ、全体として悪い印象を持っているわけでもない。実際に何日か滞在してみた感想としては、素朴なアメリカも悪くはないな、というのが正直なところである。

手作り感覚のイベント

そんな、“素朴なアメリカ”を象徴するような街で開催されたLinux Expoは、これまた、素朴な“アメリカ人Linuxer”を感じさせるようなイベントだ。今年の3月に、イベントのプロであるIDGがサンノゼで開催した“LinuxWorld”も、商業ベースのイベントとしては珍しくユーザーコミュニティーとの接点を非常に大事にしていたので驚いた。しかし、このLinux Expoは、主催そのものからコミュニティーに立脚しているようなところがあり、その意味では対照的なイベントと言える。

もちろん、米国でもこのところLinuxに対する注目度は非常に高い。そのため、IBMや米SGIといった有名企業がスポンサーとなり、米サン・マイクロシステムズ社や米コンパック社なども出展してはいる。だが、パンフレットなどの出来具合や、会場設営の手際といった、イベント運営の細かい点を見ていると、悪くいえば“素人くさい”、良くいえば“手作り感覚”という印象が強い。けれども、それは全然嫌味ではなく、むしろ、アメリカの素朴なLinuxerの熱気を強く感じることができた。会場を回っていると、日本から来た同じLinuxerとして、何だか無性に嬉しい気持ちになってきた。

電子メール端末を自由に利用できる“E-Mail Garden”に群がる当地のLinuxerたち

儀式としての基調講演

Red Hat SoftwareのBob Young氏による“KICK OFF KEYNOTE”は、RCCCの最も大きいホール(Arena)で行なわれた。開場前には順番待ちをする長蛇の列が見られたが、実際に入場してみると、体育館のような、ただっ広い会場の半分ちょっとぐらいしか埋まらなかった。まだ主催者発表は確認できていないが(無料セッションなので、主催者も人数を把握できなかったかもしれない)、目分量でみて、ざっと1000人ぐらいだろうか。何だか拍子抜けしていると、司会のアナウンスも何もなくて、いきなり、John “Maddog” Hall氏が登壇し、スピーカー紹介を始めた。

おなじみの鞄を首から下げたJohn “Maddog” Hall氏

いつもの彼らしい、親しみを込めた紹介をうけて登壇したBob Young氏は、オープンソースをベースにしたビジネスモデルの優位性について約40分ほど講演した。マイクロソフトに代表されるように、これまでのソフトウェアビジネスでは、ソースコードを非公開とし顧客を囲い込むことで成功を収めてきた。だが、これでは顧客に選択肢がなく、鍵となるソフトウェアを握るベンダーに依存(depend)してしまうことになる。

いつもの優しい笑顔で基調講演するBob Young氏

しかし、実際にユーザーが望んでいるのは、それぞれのやりたいことに合わせた(depend)システムなのであって、それを可能にするのがオープンソースによるビジネスモデルなのだという、これまでの同氏の主張を繰り返した。

彼の人柄もあってか、会場の反応は始終、好意的ではあったが、正直なところ、話の内容に関しては目新しいものはなかった。むしろ話の内容よりも、今、最も注目を集めるRed Hat SoftwareのCEOであるBob Young氏が基調講演を務めたという事実のほうが、ユーザー主導のイベントをメジャーなものへと押し上げる効果があったろう。そして、それが今のLinuxの勢いを証明していると考えることもできる。その意味では、多分に儀式的な基調講演は、その役割を十分に果たしたと言っていいだろう。

会場の半分ちょっとぐらいしか埋まらなかった、Bob Young氏のKICK OFF KEYNOTE

狭いながらも活気溢れる展示会場(詳細は次回)

Linux Expoは、現地時間の22日(土曜日)まで開催される。今回、多くの企業スポンサーがついたこともあって、展示会場も非常に活気溢れるものとなっている。展示会の詳細については次回のレポートでお届けする予定である。

有名大手メーカーも多数ブースを構え、活気溢れる展示会場

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