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“オープンソースとビジネス”をテーマに講演会を開催

エリック・レイモンド氏が初来日

1999年05月26日 00時00分更新

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26日、エリック・レイモンド(Eric Raymond)氏が来日し、“オープン・ソースとLinuxが企業にシステムに与えるインパクト”をテーマに講演を行なった。レイモンド氏はオープンソースソフトウェアの啓蒙活動を行なっており、同氏の論文『伽藍とバザール』は広く知られている。

エリック・レイモンド氏

レイモンド氏は、オープンソース運動の草分け的存在。前述の『伽藍とバザール』は、ネットスケープのオープンソース化に大きな影響を与え、一連のオープンソースムーブメントのキッカケを作ったと言われている。

レイモンド氏はまず、Linuxとの出会いを説明。「私がLinuxを知ったのは'93年。それまでUNIXを使ったことはあったが、Linuxに触れたときはまるで二日酔いから覚めたような感じだった。それで2つの決意をした。Linuxがどのようにしてここまで進化してきたか、それをコミュニティーに参加して確かめようと思ったんだ」

「Linuxのコミュニティーを見ながら、同時に私自身もさまざまなプロジェクトに参加してきた。その集大成として'96年にまとめたのが『伽藍とバザール』。私は、Linuxの中に3つの規則を見つけた。それは、各プログラマーが積極的に外部からのフィードバックを求めていること、Linuxに重要なカーネル部分は、常にバグフィクスされ、数時間ごとにバージョンアップしていること、そして最後に、優れたプロジェクトが行なわれた場合、それが賞賛されるということだ」

また、レイモンド氏はオープンソースとビジネスの結びつきについて、「OSなどのソフトウェアビジネスにおいて過去30年間、製品そのものからお金を取るという方法が取られてきた。それはすなわち、“秘密”にしたソフトウェア技術に価値があるということ。だが、それ以外でもビジネスは可能だ」と述べた。

「方法はいくつかある。ソフトウェアはオープンなので、ドライバー開発などハードウェアの信頼性を高めるビジネスも可能だ。また、サポートをオプションとするサービス市場も拡大できる。そのほか、専門書籍、雑誌、果てはTシャツ、マグカップなどローエンド分野をターゲットとしたアクセサリー市場も考えられる。パソコン書籍で有名なオライリー社は好例だ。また、これは推定モデルだが、ソフトを無料にしてブランドを売るモデルも考えられるだろう」

「これまで秘密にしてきたものをオープンにするタイミングは難しく考えられがちだが、実は非常にわかりやすい。それは、その技術を秘密にしておくメリットがなくなったときだ。信頼性への要求が高まったときである」

講演後には質疑応答の時間もとられた。参加者からの「Linuxは、Windowsと違ってユーザーレベルの開発が中心なので、ある日突然プロジェクトが止まることも考えられるのではないか」という質問に対して、レイモンド氏は、「それはマイクロソフトも同じ。開発者がある日突然会社を辞めてしまうかもしれない。たとえ企業であってもサポートの保証はできないはず。それよりも本質的なことは、それがユーザーからのニーズがある限り、対応され続けるということ。例えば、アメリカにLinuxCare社というサポート会社設立された。ここでは年中無休のサポートが世界中で受けることができる体制を整えている」と説明した。

参加者は約100人。定員500人の会場は閑散とした雰囲気が感じられた

今回の講演は、(株)日経BP社が主催したもので、本日会場を訪れた参加者は100人足らず。定員500人クラスの会場だったため、閑散とした雰囲気が感じられた。

今回の講演についてLinux Japan編集長の風穴江氏は、「日本ではまだ、オープンソースとビジネスが結び付くという認識が低いようだ。“Linux”は、Windows NTとの比較もあって、比較的ビジネスに結び付けて考えやすいが、オープンソースという言葉になるとまだまだ」と解説する。また、「特に主催者の日経BPがアピールするような企業側の人たちにとっては、オープンソースという言葉は“共鳴”するものがないのだろう。オープンソースとビジネスの関係というテーマ自体は悪くはないが、これは、この講演会に足を運ばなかった人にこそ聞いてもらいたいテーマだと思う」とコメントした。

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