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デザインツールで変わる大学教育 第2回

伝え方を発明する授業──多摩美大永原教授に聞く

2009年03月17日 16時00分更新

文● チバヒデトシ

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プレゼンツールは禁止、自分で作ること


 ゼミに参加する学生は毎週プレゼンする。永原教授は、それを批評し、学生が何を伝えようとしているのかを読み取る。プレゼンテーションソフトを使うことは禁止だ。「PowerPoint」はもちろん「Keynote」もである。


 「こういったツールは、自分で作れない人が簡単に使うためのものです。自分で作れる人は使っちゃいけないし、それを作る人にならなくちゃいけないんだと教えています」


 そう伝えることで、プレゼンする学生に明確な意図と工夫が生まれる。ほとんどの学生は、ペーパーと口頭による発表に加えて、FlashやPDFを使うが、動画を駆使したプレゼンもあるという。PDFで作る学生はグラフィックスとしてきれいに示したい、Flashで作る学生は動きを出したいなど、自分の表現に合ったツールは何かを改めて考えさせる動機にもなる。

学生が制作したフォントについて説明する永原教授。文字を作り、それを使って表現する。動画なども使われる

 学内のハードウエア、ソフトウェア環境はそれなりに整っており、情報デザイン棟だけでも、Macを備えた2つの教室(それぞれ40台と25台)のほか、プログラミングやウェブ系の演習で利用するWindowsの部屋(25台)もある。

 ただし、これらのツールの使い方は多くの学生が独力で学んでいる。永原教授も基本的には自分で学んで欲しいというスタンスだ。必要最小限のことは仕方がないので教える。基礎過程ではHTMLやActionScriptの初歩を教える講義を設けてはいるが、ツールそのものの使い方を教える講座はない。意欲のある学生は、ツールの扱いに慣れた講師に直接聞きにいく。


 「理想的なのは海外の大学のようにテクニシャンが常駐していることなんです。昔なら印刷とか版画の専門家がいて、何でも質問できた。(多摩美大にも)技術講師というカテゴリーがあるにはあるのですが、ソフトウェアの担当まで用意するとなると、なかなか難しい部分があるようです」

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