生活密着の先にある、未来の姿とは?
i コンシェルのコンテンツは、おそらくこれまでのケータイコンテンツとは違った種類のものも必要だ。例えば自治体ごとに違う情報。生活インフラなら断水や停電の情報、自治体が出す健康診断や乳がん検診などの情報などは、インターネットのウェブサイトにはあるが、ケータイから取得しにくかったし、プッシュもしてくれていない。
「公的機関の情報などをアグリゲートする必要性も出てくるでしょう。自治体によって温度差はものすごくありますが、自治体と一緒にやっていかなければならないサービスも含まれていると思います」(前田氏)
また位置情報の活用についても、将来的にはi コンシェルに関連してくるのではないか。ドコモも参加している情報大航海プロジェクトの「マイ・ライフアシストサービス」では、自分の行動履歴から関連する情報を提供するような試みがあり、これらがi コンシェルと連携し始める未来像もあるだろう。
「どのような位置情報の使い方がユーザーにとって便利なのか、常に考える必要があります。街を歩いていたら勝手に安売り情報でケータイがあふれかえっていたら、ユーザーにとっては迷惑なだけです。むしろ、欲しいモノが決まっていれば、安売りの情報はその場所にいなくても欲しい情報です。このように、位置情報は万能ではないが、便利なシーンもあるはずです」(前田氏)
便利なシーンとは、コンテクストの「限定感」「特別感」ではないか、と前田氏は指摘する。たとえば毎日行く職場の周りの画廊の情報はいらないが、休日にたまたま行った銀座の画廊の情報は欲しいかもしれない。ただ、これらを実現するには、「マイ・ライフアシストサービス」で行なっているような細かい行動履歴が必要で、「どれだけの人がONしてくれるのか? 便利さとのトレードオフになるだろう」(前田氏)とのことだ。
iモード10周年を迎える2009年、ケータイをデバイスとしてとらえるよりも、パートナーとして見ることもできるようになってきた。ケータイ自体がその人のコピーのような存在と言えるほど、生活には密着して入り込んでいるシーンも見られる。
そのケータイを賢くしていくのがi コンシェルであり、新しいプラットホームなのだ。「オマエ、そんなに賢くなったのか! とユーザーに思われる必要不可欠な存在にしたい」(前田氏)。思わずそんな感想を漏らしてしまうのが、未来のケータイの姿なのかもしれない。
筆者紹介──松村太郎
ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET。
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