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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第19回

薄型モバイルdynabook SSはNetbookに勝てるか

2009年02月23日 10時00分更新

文● 西田 宗千佳

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薄型だが堅牢設計
操作性も良好で「長く使える」製品に

 10型クラスの製品と違って、12型クラスであるSS RXの場合、同じ重量でもフットプリントは大きくなる。ということは、それだけ薄くなるわけで、強度に不安を感じるところだ。しかしSS RX2は、薄型であるが非常に強固な作りになっている。

本体前面と背面

本体前面(上)と背面。最厚部でも25mmほどしかないが、強度はしっかりと確保

 スペック的には、「100kgf面加圧に対応」といった表記もあるが、同社のウェブサイトで公開されているテスト映像を見た方が説得力がある。こうしたテストは、実際にすべてのシーンで壊れないことを示すものではないが、少なくとも「安心感」を与えてくれる。満員電車の中や机からの落下などで痛い目にあったことがある人には、やはり魅力的なことだ。

 フットプリントの大きさは、そのまま操作性に直結する。キーピッチは19mmと余裕がある作りで、タッチ感も良好。長時間タイプしても疲れは感じにくい。タッチパッドの方も、操作性は良好で使いやすい。ただし、メッキ仕上げのボタンは少々安っぽさを感じさせ、デザイン的にはマイナスではないかと感じる。

 堅牢で操作性が良く、トラブル発生時にも対応が容易であるということが、SS RX2における「価格の価値」なのだろう。確かにそれらはどれも、低価格なNetbookでは得られない。Netbookが「2年で使い捨てるパソコン」だとすれば、SS RX2は「4年から5年、仕事に使い続けるパソコン」という印象を受けた。

 問題は、Netbookの6倍にもなる価格を、「+2年」のために払うのか、ということだ。仕事で会社から与えられるのならともかく、「自腹では……」という人も少なくないのではないだろうか。

 高いパソコンを買うということは、それなりの「価値」を購入者が認めてくれなければ難しい。2年前ならば、「薄い・軽い・頑丈・使いやすい」という組み合わせは、十分に30万円の価値を持ち合わせていただろう。だが現在は、それだけでは足りないかもしれない。価格差を埋めるには「持っている満足感」が必要だ。もはや個人にとって、30万円を超えるモバイルノートはスポーツカーを買うようなものなのだから。

 率直に言えば、SS RX2にはこの「満足感」が足りないように思う。タッチパッドのボタンに安っぽいメッキパーツを配置するようでは、そうした満足感は得られない。同社の低価格モデルのようなカラーリングを望むわけではないが、「この製品にしかない美観」がほしい。

 逆に言えば、デザインでなく純粋な性能に高いコストを払う意志があるなら、SS RX2は十分に価値のある商品である、ということにもなる。完成度の面でこれを超える商品はそうはない。

 気になることと言えば、SS RX2は「ライフサイクルの後期」にあたる製品であることだ。SS RXの初代機は、2年近く前に登場した。実用上十分とはいえ、1.20GHzというクロック周波数は低く感じる。具体的にいつになるかはわからないが、SSシリーズのリニューアルは遠い話ではないだろう、と予想される。

 「新機種が出るとくやしい」というイメージを持ちやすい人にとっては、SS RX2は買いにくい製品かもしれない。一方で、「長く使えるパソコンが欲しい」と思う人から見れば、「設計がこなれて熟成された製品」と見ることもできるだろう。

 個人的には、後者の意見に賛成だ。特にモバイルノートの場合、性能はCPUなどのデバイスだけでは決まらない。同じベース設計の機種でも、新製品投入のたびに細かな修正が加えられ、設計が熟成されていることは少なくない。SS RXシリーズのコンセプト自身に納得できるなら、SS RX2は「買い時になった」と感じている。

オススメする人
・長く使えるビジネスノートを探している人
・操作感の良い軽量PCを求めている人
dynabook SS RX2/T9HGの主なスペック
CPU Core 2 Duo SU9300(1.20GHz)
メモリー DDR2-667 3GB
グラフィックス Intel GS45 Expressチップセット内蔵
ディスプレー 半透過型TFT 12.1型ワイド 1280×800ドット
HDD SSD 128GB
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、KDDI CDMA 1X WIN通信モジュール
カードスロット PCカード Type II×2、SDカードスロット
インターフェース USB 2.0×3(うち1はeSATA共用)、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど
サイズ 幅283×奥行き215.8×高さ25.5(最薄部19.5)mm
質量 約1.053kg
バッテリー駆動時間 約12.8時間(JEITA測定法 1.0)
OS Windows Vista Business SP1(Windows XPダウングレードメディア付属)
価格 オープンプライス(予想実売価格 30万円前後)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)。


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