「石油危機以来のマイナス成長」の衝撃
2月16日に発表された2008年10~12月の実質GDP(国内総生産)は、年率マイナス12.7%となった。これは石油危機のマイナス13.1%に迫る35年ぶりの水準だ。この直接の原因は円高と北米市場の消費の落ち込みだが、その背景には世界的に蓄積していた経常収支の不均衡がある。下図のように、1990年代からアジアを中心とする新興国の経常黒字が急に増える一方、それをアメリカの経常赤字が相殺する形で、グローバルな経常収支の均衡が保たれていた。その規模は世界のGDPの2%に相当する約1兆ドル。日本の国家予算を上回る巨額なものだ。
この原因は二つある。一つはアメリカの過剰消費、もう一つは新興国の過剰貯蓄だ。ただ新興国から供給される資金以上にアメリカが消費(投資)したら、金利は上がるはずだが、現実には90年代から世界的な低金利が続いている。つまり主要な原因は、新興国が急成長して所得が増えたのに対して、それを投資する国内の市場が少ないため、過剰な貯蓄がアメリカに流入したことだと考えられる。
経常収支の赤字は、必ずしも悪ではない。企業が借金ゼロである必要がないように、資金需要の大きな国が資金余剰の国から借りることは、両方にとってメリットがある。しかし現在のマクロ不均衡は歴史上かつてない規模であり、それが長期的に維持できるかどうかを専門家は危惧していた。特に問題は、世界の過剰貯蓄をほとんど一国で吸収していたアメリカの経常赤字が、GDPの6%という危険水位に達していたことだ。
借金は債務者がちゃんと返済し、債権者が常に借り換えに応じるかぎり続けることができるが、返済が滞って債権者が一挙に回収に走ると、債務者が返済に行き詰まる。これによって他の債権者がさらに取り立てに走る……という「取り付け」が起こると、この構造は崩壊してしまう。そういうパニックが全ての国で一斉に始まることはきわめてまれだが、今はそういう「100年に1度」の例外的な現象が起こっているのである。
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