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世界企業パナソニック 90年目の決断 第20回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

パナソニックを支える技術「UniPhier(ユニフィエ)」

2009年02月18日 12時10分更新

文● 大河原克行

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UniPhier 5つのロードマップ

 UniPhierには、大きく5つの技術ロードマップがある。

 ひとつは、ビデオカメラなどに搭載するパーソナルAV商品向けのUniPhier P。2つめは、携帯電話などに搭載されるモバイル向けのUniPhier M。3つめには薄型テレビやブルーレイレコーダー、DVDレ コーダーなどのホームAV向けのUniPhier H。4つめには、オーディオ機器向けのUniPhier A。そして、2008年10月から追加されたセキュリテイ分野向けの新たなUniPhierである。

 2008年10月時点でUniPhierが搭載された商品は、43シリーズ137機種。2007年9月時点では22シリーズ83機種であったことと比較すると、1年間で一気に搭載商品数が増加していることがわかる。

 最新世代のUniPhierの特徴は、データ圧縮・伸張技術であるMPEG-4 AVC(H.264)に対応している点である。

 2009年2月から発売したコンパクトデジカメのLUMIXシリーズには、AVCHD Lite機能を搭載。撮影したハイビジョン動画を、SDカードを差し込むだけで、薄型テレビ「VIERA」で視聴できるようになった。すでに、VIERAシリーズの全商品にSDカードスロットが標準装備している。また、同様にビデオカメラで撮影した映像のほか、新たなリンクとして、セキュリティカメラで撮影した映像も、VIERAで視聴できる。

 「セキュリティカメラは、アナログからデジタルへと大きな転換期を迎え、IPベースの世界へと移行している。パナソニックがこの分野にいち早く進出できたのは、長年に渡りAVC事業で培った技術ノウハウがあり、それをUniPhierプラットフォームを活用することで、短期間で開発することができたため」

 同様に、セキュリティの観点から高い評価を得ている家庭用の「どこでもドアホン」が、薄型テレビVIERAとの連動によって、テレビを視聴中に来客確認が可能になるのも、やはりUniPhierの成果によるものといっていい。

 ドアホン市場で7割以上のシェアを持つパナソニックの強みは、ここにある。

 現在、UniPhierは、45nmの最新技術を活用して量産されている。

 これによって、システムLSI事業開始当初の0.25μmに比べてチップサイズは95%も削減され、画像圧縮伸長技術や3Dグラフィックスエンジン、マルチプロセッサ化などのデジタル家電に必要な技術を1チップで実現している。

 微細化技術によって進化しているUniPhierは、コスト削減、高信頼性の実現、省スペース化の達成、そして環境配慮といった点でも効果を発揮している。

 「「0.25μmで生産されたシステムLSIに比べ、現在の45nmによる生産では、コストを2分の1に引き下げ、大幅な省電力化を達成できる。もし、日本のデジタル家電に搭載しているシステムLSIが、すべて0.25μmのままだったら、原子力発電所をさらに25台も増やさなくてはならない計算になる。微細化は省エネにも大きく貢献する」

 もちろん、ここにはUniPhierならではの省エネ技術も貢献している。

 「UniPhierの省エネ技術を生かすとともに、環境廃棄物を出さない、環境負荷を減らす、エネルギーそのものを創るといった観点にも活用し、Eco UniPhierとしての展開も視野に入れたい」と、古池副社長は語る。

 UniPhierは、変化が激しいデジタル時代に対応したパナソニックの技術戦略の代表格だ。

 たが、この変化に対応するためには、技術戦略全体の舵を切る必要がある。

 UniPhierを投入した2005年を前後して、パナソニックは、技術戦略を大きく転換したともいえる。

 「アナログ時代は、毎年8%の技術が陳腐化していたのに対して、デジタル時代では、毎年25%の技術が陳腐化していく。4年経ったら丸々無くなる計算だ。その時代において、技術戦略をどうするか。パナソニックはまさしく舵を切った」(古池副社長)

次ページ「デジタル時代の技術資産」に続く

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