デジタル時代の技術資産
古池副社長が打ち出した戦略のひとつは、陳腐化しない本質的な技術資産を残すことだ。
そのためには、要素技術を開発し、知財でこれを守る。だが、これはアナログ時代にも共通する戦略といえる。
ではデジタル時代の技術資産とはどうあるべきか。
「技術消費型の時代において、長々と開発に時間をかけるのは適さないのは明らか。さらに、アナログ時代のように同時並行的に同じような技術を開発するのではなく、方向性を見据え、整理された方針の上で技術が開発される必要がある」と古池副社長は語る。
技術のフレームワーク化、プラットフォーム化を促進し、どの部分までを基盤技術として開発するか、どの部分をブロック化/ユニット化するのかといったことを明確にし、陳腐化しない技術構造へと再編する必要がある。
UniPhierでは、ハイディフィニションプラットフォームにおいて、ビエラリンクによるネットワーク機能、デジタルテレビ技術、MPEG技術、高画質化技術、カメラ技術、低消費電力技術などのブロックで構成し、「見る」、「録る」、「撮る」のすべてを、フルハイディフィニション環境で実現できるようにした。
ブラックボックスを構成する技術は、ブロック化/ユニット化し、陳腐化した部分は入れ替え、これにより技術資産全体の陳腐化を防ぐことができるという考え方だ。
こうしたデジタル時代の技術資産体系をしっかりと構築した上で、古池副社長が打ち出す2つめの方針が、回転率の追求である。
「不易流行を追うためには、技術を回転させなくてはいけない。技術を最高速で回転させ、商品開発効率をあげることが必要」
この部分はブロック化/ユニット化された技術のことを指すといえよう。ブラックボックスを構成する技術は、ブロック化/ユニット化し、陳腐化した部分は入れ替え、これにより技術資産全体の陳腐化を防ぐことができるという考え方だ。
「市場が求める技術、商品は日々変化しており、25%の技術が陳腐化するなかでも、否応なしに対応しなくてはならない。そのためには、技術が短期間に陳腐化するのを覚悟で回転型の技術開発にも挑まなくてはならない。それは、基盤技術がしっかりしているからこそ挑めるものだといえる」
技術者の多くは、どちらかというとじっくりと腰を落ち着けた長期的な姿勢で技術開発に取り組む傾向が強い。
パナソニックもそれは同じだ。だが、古池副社長はあえて、回転を早める技術開発への意識転換を図った。
「アナログ時代は、基盤技術で多くの領域をカバーできたが、デジタル時代にはそうはいかない。いまこの技術が必要だと思えば、技術者を説得して、その技術開発に取り組む。そうしなければ、パナソニックは倒れる。それぐらいの危機感を持って、挑んでいる」
UniPhierによってもたらされる次の進化では、ウェアラブルAVCともいえる領域が期待できそうだ。
具体的な商品企画の段階ではないが、4Gや3.9G、あるいはモバイルWiMAXというワイヤレスネットワークインフラを活用し、フルHDの動画を、いつでも、どこでも、誰もが楽しめる端末の登場も今後のテーマといえよう。
いまはワンセグでしか見られない映像をフルセグで視聴できる可能性もある。
圧縮・伸張技術、高画質化技術、さらには、モバイル機器の大画面化、アンテナの高性能化に伴い、これらをストレスなく実現するための省エネ技術は、まさにUniPhierが得意とするところだ。
UniPhierの存在は、パナソニックの強い商品の創出に最大の武器となっている。そして、競合他社にとっても、大きな脅威となっている。

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