人気漫画の原画が見られるマンガ部門
まずはマンガ部門から。それぞれの作品の画力に迫る原画が見られるのがファンにはうれしい。また、実際に作品を手にとってじっくり読む事ができる閲覧コーナーがあるのもマンガ部門ならでは。最近は「のだめカンタービレ」など音楽をテーマにしたマンガが多いが、受賞作品にもその傾向が見られた。
大賞受賞作品の一色まこと「ピアノの森」は、森で育った天才的な音楽の才能を持つ少年がピアニストに成長していく姿を描いたストーリーマンガ。優秀賞にも音楽を題材にしたさそうあきら「マエストロ」が選ばれている。
イラストレーターのいしいさんはそれらのストーリーマンガではなく、奨励賞の「Cartoon 2008」(菊池正文)をベストチョイスにセレクト。1枚の絵に風刺や笑いを凝縮したユーモアのある一コママンガは、じっくり見ていると徐々に面白さが伝わる。「思わずクスッとしてしまう。私にはこれがいちばんしっくりきます」といしいさん。
原さん、飯田さんもこれをベストチョイスに選んだ。林さんは優秀賞の「栞と紙魚子」(諸星大二郎)とどちらにするか悩んだ末、同じく優勝賞「宗像教授異考録」(星野之宣)を選んだ。「読んでみたいと思わせる。濃そうな作品ですね」と林さん。神話や伝承の裏に潜む歴史的真実を民俗学の第一人者、宗像教授が明らかにしていくストーリーマンガだ。
手書きに刺繍……アナログ感覚が新しいアニメーション部門
次にアニメーション部門。作品映像がディスプレイに表示されており、絵コンテやシナリオなどの制作過程の貴重な資料も展示されている。また、会場内のシアターではアニメ全編が上映されている。大賞を受賞したのはショートアニメ「つみきのいえ」(加藤久仁生)。監督の詳しいことについては「加藤久仁生監督に聞く、ネットアニメの現在地」をご参照。アカデミー賞ノミネート作でもある期待の本作が選ばれるなど、あえてメガヒット作を大賞に入れないところがメディア芸術祭の良さだろう。
大賞の他にメディア芸術祭の常連とも言える山村浩二や湯浅政明などの「大物」が優秀賞に名を連ねていたものの、アーティスト・飯田さんが興味を示したのは「DREAM」(荒井知恵)だった。
愛らしい眠っている馬が見る夢を描いた短編作品だが、特に飯田さんが激しく反応したのは、この絵が本物の刺繍で描かれているというところ。また、いしいさんは「これまでの山村作品の中でいちばんかわいい」と言うことで、「こどもの形而上学」(山村浩二)をベストチョイスに選んだ。