“ガジェット以外”にも広がるデスクトップアプリ
デスクトップアプリの事例としては、基調講演でリンチ氏が紹介した中から2つ、印象的だったものを紹介しよう。ひとつは、ニューヨークタイムズ国際版のニュースリーダー。このニュースリーダー、最新のコンテンツを自動的にダウンロードし、見慣れた新聞紙面のようなレイアウトで表示してくれるアプリケーションだ。Flash Player 10で強化されたテキストレンダリングエンジンによって、滑らかで美しいテキスト表示を実現している。
特徴的なのは、常に画面解像度に合わせた見やすいレイアウトでコンテンツを表示してくれること。Webブラウザーでニュースサイトを閲覧すると、解像度の低いマシンやブラウザーのサイズを小さくした際に、横スクロール操作が発生したり、レイアウトが崩れて見づらくなるなどの問題があった。このニュースリーダーでは、1行の文字数を自動的に変えたり、写真のサイズや配置を調整したりと、解像度に合わせた最適化をしてくれる。デモではLinuxベースの台湾COMPAL製携帯端末でも同じアプリが動く様子が紹介されていたが、Netbookのような小型端末でも便利そうだ。
もうひとつ、興味深かったのは「AIRめんこ」。Felicaをリーダーの上にポン! と載せると、AIRアプリ上に3Dの「めんこ」が出現。もう1枚、別のFelicaをさらに載せると対戦ゲームができる。それだけといえばそれだけなのだが、おなじみのICカードを全然違う用途に使うアイデアが楽しい。たとえばカードバトルゲームのように、ローカル側でもデバイス(ICカードなど)をうまく使えると、単に「Webアプリをローカル化する」だけとはまた違った新しいアプリやサービスが作れるかもしれない。
「1億インストール」を超えて
リンチ氏は講演の中で、AIRラインタイムのインストール数がこれまでに1億回を超え、普及が順調に進んでいることを発表した。もっとも、AIRのランタイム自体はアプリをインストールする際、同時に自動的にインストールできるもの。そのため、Flash PlayerやSilverlightのようなブラウザープラグインとは異なり、ランタイムの普及率はそれほど重要な意味を持たないのかもしれない。
それでも、AIRランタイムがこれだけ急速に広がっていることは、魅力的なアプリが増えてきたことの証でもある。実際、今回のAdobe MAXの会場で見かけたさまざまなデバイスで動く多種多様な事例やサンプルは、どれも新鮮で、Flash開発者ではない筆者でも大いにわくわくさせられるものだった。「マルチスクリーン対応」というのはここ最近、アドビがよく使っているメッセージだが、AIRにおけるその具現化の時期もいよいよ近づいているようだ。