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英雄だってたまには悪いことがしたい!?「Fable II」

2009年02月01日 19時00分更新

文● 内田幸二 イラスト●戸塚伎一

誤操作を招くインターフェイスは
プレイヤーの「心」を浮き立たせる

 悪行の醍醐味について書いてきたが、「Fable II」の製作者は、善行と悪行のどちらを推奨しているのだろうか。筆者のプレイ体験からは「あなたが決めなさい」という答えが正しいのではないかと思う。確かに、悪行の方が、奥深さがあるのは事実。だからといって、端的に悪行を推奨するゲームとは言い切れない。その良い例がインターフェイスのデザインだ。

メニューから戻るときのBボタンでのキャンセルは思わず連打しがちだが、押しすぎるとゲーム画面に戻った直後にウィルを発動してしまう

 遊んだ方は分かると思うが、このゲームは誤動作を招くようなインターフェイスデザインになっている。英雄しか使えない魔法である「ウィル」が、システムで多用する「キャンセル」と同じ、「Bボタン」に設定されており、街でキャンセルしようとして連打すると、つい「ウィル」を使ってしまうのだ。人によっては、「デザインが悪い!」と思うかもしれないが、筆者の場合は、計算されてデザインされた結果だと思っている。

 この誤動作を招くようなインターフェイスデザインには、ふたつの意味があるのではないかと思う。ひとつが、「ヒーローと異端者」の関係だ。アメコミなどで描かれる「普通でない力を持つ者の疎外感」の演出である。「つまずいたのをきっかけにウィルが発動し、まわりを恐怖に陥れることができる。そのため、英雄とは非常に繊細に生活しなければならない存在である」という、クリエイター側からのメッセージのように思うのだ。つまり、普通の人以上に繊細な心持ちでの生活(ゲームプレイ)を強要されるというわけだ。

 もうひとつが「魔が指す」状態の演出である。思わず発動してしまった「ウィル」を見て、「これをもっと使ったらどうなる?」とプレイヤーなら誰もが思うはずだ。ただ、常識や道徳の観点から考えると、人を驚かすこと自体が悪行である。ただ、誤操作による偶然でその状態を起こし、「なにこれ? 人を驚かすのっておもしろいじゃん!」という状態を加速させるているのではないか。つまり、人工的に「魔の指す」空間作りがなされているのである。

入力のカスタマイズもできないため、誤動作の制御はプレイヤーの心配りにゆだねられている

 そう考える誤操作しやすいインターフェイスデザインには、「異端の力を理解して行動する善意の英雄」と、「魔が指すように人を傷つける悪意の英雄」が共存しており、「善行肯定」も「悪行推奨」もどちらでもないのではと感じる。つまり、誤操作を招きやすいデザインは、あなたの「心」を浮き彫りにさせる操作形態になっているのだ。

家族を持つことはゲームの大きなテーマ。善行プレイでは、英雄の帰りを待ち、贈り物まで用意しているような妻だったが、悪行プレイではすれ違いが原因か、罵倒されるようなことも多い

 本作の作者であるピーター・モリニューは、「ポピュラス」を始め、「ブラック&ホワイト」など、神の視線で展開する「ゴッドゲーム」を数多く制作しているクリエイターの1人だ。筆者の観点では、今作もそのゴッドゲームの流れを組んだタイトルではないかと思う。
 主人公である英雄は、神のような力を持ちながらも心は人間。ここで言う、「心」とは、もちろん「あなた」だ。「神がかった人間が、地上に人間に存在したら、どんな行動を起こす?」というのが、制作者側が持っているテーマのひとつではないかと思う。そして、「Fable II」では物語の中であなたの「心」が試されているのである。

プレイのスタンスで、子供の精神的な成長も微妙に変わるようだ。悪行プレイの子供の台詞からは、「ママは家族をかえりみないけど、私はあなたの子供なのよね、そうなのよね」と母親を試しているような雰囲気さえ感じる

 今回は悪行を中心に書いてきたが、「Fable II」は、悪行の行為を楽しませるゲームではない。ただし、悪行がゲームの仕掛けの1つであるのは確か。悪行をするのにも、自分に素直になって心をトレースしてみてはいかがだろうか。あなたの心の形は、アルビオンの人々と、英雄の顔に刻まれてるので、一目瞭然とも言えるわけだ。

作品紹介:Fable II


メーカー:マイクロソフト
対応ハード:Xbox360
ジャンル:アクションRPG
発売日:12月18日
値段:7140円
対象年齢:CERO Z(18歳以上のみ対象)


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