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松村太郎の「デジタルとアナログの間」 第7回

松村太郎の「デジタルとアナログの間」

アートは日常の再発見──ICC 四方さん

2009年01月27日 22時00分更新

文● 松村太郎

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You and I, Horizontal

ゲスト●NTT ICC 特別学芸員 四方幸子(しかたゆきこ)さん

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 特別学芸員。東京造形大学特任教授、多摩美術大学客員教授。ICCやキヤノン・アートラボ、森美術館などで多数のプロジェクトを実現。また、国際的なメディアアート賞の審査員を歴任。現在開催中の「ライト・[イン]サイト」のキュレーターを務める



光とは、知覚とは何か?

 現代の主要なコンピューティングは、人の視覚によるフィードバックをフル活用することで成立している。ある意味において、デジタル化された情報は視覚を介したアナログ情報として人間に入ってくる。

 人間と機械を直につないでコンピューティングするような時代が来るのか否かについてはまだわからないが、当分の間は視覚を介したコミュニケーションが続くだろう。

 2009年2月28日まで開催中のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)の企画展「ライト・[イン]サイト─拡張する光、変容する知覚」のキュレーターを務めた四方幸子さんは、同展について「自分にとっても、これまでの20年間気になってきた作品を、『光と知覚』というテーマでまとめた総決算」だとコメントする。

 本展に訪れた人を最初に出迎えてくれる作品は、ベングト・ショーレン&アーダーム・ショムライ=フィシェル with ウスマン・ハックによる「WiFiカメラ・オブスクーラ」。

 無線通信で使われる高周波を始め、目に見えない電磁波を可視化するこの作品は、現代の都市空間の違ったランドスケープを示す。そしてまた、可視光線も同じ電磁波であること──引いては、世界には知覚可能な部分とそうでない部分があることを感じさせる。これは、「自分に見えるか否か」「その見え方は?」という光についての研究が始まったころからのテーマでもある。


四方さん 外にある光を受動的に取り込んで映し出すカメラ・オブスクーラは、光学にまつわる研究や芸術の原点にあるとされています。ルネサンス以降、リアリティーのある表現を可能にする遠近法が普及しました。普段意識することはありませんが、この技法は人の視覚──世界認識の方法にも影響を与え、人間のものの見方まで拘束しているのです。


 我々の感覚は、社会的そして文化的な世界認識に制限されている。視覚を担う器官には個人差があるし、そこでは遠近法とは違う受け取り方をしているのかもしれない。しかし、遠近法を始めとしたさまざまな世界認識の影響下にある我々は、そういった器官の受け取り方を知覚/理解するには至っていないのである。

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