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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第56回

クラウドで変わる学びと仕事――小山龍介氏と考える

2009年01月17日 13時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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Knowing WhatからKnowing Howへ

小山氏は1975年福岡県生まれ。現在、松竹株式会社のプロデューサーおよび松竹芸能株式会社事業開発室長として、歌舞伎やお笑いをテーマにした新規事業の立ち上げを行なっている

 iPhoneを使い始めて、不安が減った、というのは小山氏と僕との間での共通認識だった。ウェブにある情報は、いつでもポケットの中の端末から自由にアクセスすることができ、地図などの位置情報を使うアプリでは、現実空間で自分の周りに存在している情報を集めることも簡単になった。家を出るときに地図をプリントアウトするだとか、ランチの場所を下調べしておくだとか、こういったことは一切必要なくなったのだ。

 「知らない土地に行っても不安を感じることはなくなりました。旅行や出張先などでは、iPhoneは活躍しています。今までは何を知っているかというKnowing Whatが重要な時代でしたが、ウェブ上の集合知にいつでも手元からアクセスできます。したがって、Knowing Whatに価値はなくなり、代わりにこれからは情報にアクセスし適切に取り扱う手段を知っているかというKnowing Howが重要になってきます」(小山氏)

 まさにiPhoneは、ウェブを活用する手段の1つであるし、先に述べたクラウドについても、どのようにウェブを生かすか、と言う手段の1つである。iPhoneを持っていたとしても、どのようなキーワードで検索するか、どのようなアプリを活用したいか、というHowの部分がなければ使うことができない。小山氏は「問いかける力こそ最も重要なスキル」と説明する。

 「ウェブには、MITなどの大学がオープンコースウェア(OpenCourseWare)として大学の授業を公開しているし、iTunes Uでも大学の授業をPodcastで視聴できます。知識習得の場は広く開放されるようになりました。しかしだからこそ、実際の現場に行く、人と接する、議論することに全く違う価値が存在していて、問いかけのスキルによって無意識の学びの機会に気付くことができるのです」(小山氏)

 実は僕と小山氏は、アクションラーニングというワークショップに一緒に参加したことがある。「質問会議」という書籍の著者、清宮普美代氏がファシリテイターを努めたワークショップは問いかけを強制する会議手法が特徴だった。問題解決や事の本質へのアプローチなど、いかにヒントになる問いかけを見つけるかが大切な場を経験して、「なんで?」という素朴な疑問を持つことが、無意識の気付きにたどり着く早道であることを再確認する機会となった。

 「iPhoneは問いかけを生みやすく、またウェブを介して問いかけに答えてくれる端末なのかもしれません」(小山氏)

 この言葉は、iPhoneがKnowing Howのツールとなっていることを強く意識させる。そして次に紹介するiPhoneによる情報感覚の変化が、そのことを裏付けてくれる。

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