流通戦略も徹底見直し
一方、流通戦略では全国量販店に集中していたものを、地域量販店とのバランスをとった戦略へとシフトした。
地域量販店の販売比率は2007年度の24%から、2008年度第1四半期には27%へと増加。他方、大手量販店や大手ディスカウンターの構成比は減少傾向にある。
地域量販店は、全国展開している大手量販店とは異なり、店員の豊富な商品知識や購入後のアフターサービスなどによって、地域に密着した差別化を行なえるのが特徴。パナソニックでは、そのなかからとくに優良な地域量販店を「ビエラディーラー」として認定し、量販店向けの商品説明会の実施や、商品展示のアドバイスを行なうなどの支援体制を敷いている。
また、北米市場のコンシューマ商品の販売を担当するパナソニック コンシューマエレクトロニクス社を、デジタル家電商品の開発・生産を行うAVCネットワークス社と連結会社化し、製販一体の体制を整えた。この結果、適切なタイミングで、適切な商品を投入でき、在庫が1年間で4割も減少したという。
さらに、従来から北米市場で推進してきたプラズマ・コンシェルジュ・プログラムやカスタマー・コールセンターの強化により、顧客満足度の向上にも取り組んでいる。
プラズマ・コンシェルジュ・プログラムでは、プラズマテレビ購入者に対して、専用電話による待ち時間なしの応対のほか、24時間以内のサービス訪問アポイントメントの設定、個人専用ページの開設や限定商品のオファー、ライブチャットによるリアルタイム相談、修理期間中の代替機の提供、1年間の無料訪問修理サービスを提供するというものだ。
また、カスタマー・コールセンターでは、130人体制を敷き、364日間午前9時から午後9時までの有人対応のほか、24時間体制での自動応答を実施している。
「年間コール数は470万本。平均応答スピードは28秒以下、放棄呼率3%以下を目指す。また、ここで集まった声はドメインの商品企画部門にフィードバックし、モノづくりに生かす」という。
ドメインと直結した製販一体体制が、カスタマー・コールセンターの強化を、より意味があるものとしている。
北米市場は、薄型テレビの低価格化が最も激しい市場。テレビメーカーにとっての主戦場だけに、各社が戦略的に価格を引き下げてくる。ウォン安を背景に価格戦略を仕掛ける韓国メーカーや、生産拠点を持たないファブレスメーカーの低価格戦略も、市場全体の価格動向に大きく影響する。
パナソニックも、この価格戦略に追随しないわけにはいかないのは事実だ。ただ、そのなかでも、パナソニックは、サービス強化を含めた付加価値戦略で、他社との差別化を図ろうとしている。
北米市場は、いわば金融危機を発端とした経済環境の悪化の影響を最も受けている市場でもある。
小売り大手のサーキットシティの破綻を発端として、販売店における仕入れの抑制や、消費者の消費停滞といった動きも顕著になっている。
だが、北米におけるパナソニックの構造改革への取り組みは、経済環境の悪化よりも一歩先んじたものとなっている。
北米においては、厳しい市場環境のなか、まさにいま、構造改革の成果が問われようとしている。

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