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デザインツールで、変わる大学教育

思考力に加え、伝達力が求められる社会で

2009年02月23日 17時58分更新

文● 編集部、監修●チバヒデトシ

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慶応大学の導入状況は


 「一方で、この3年ぐらいの間に、学生側にクリエイトするという感覚がずいぶんと養われてきたなとも感じるんです」

 ITの進化も関係していると金氏は話す。かつてはクリエイティブツールは高価で扱いも難しかった。しかし、PCの性能が上がり、ツールもより使いやすい方向で進化している。「表現方法で伝わり方が違う」という実感も学生を後押しする。そして、ツールへのニーズ(=大学側の環境整備に対するニーズ)も相対的に高まってきた。

2008年新設されたメディアデザイン研究科では、、同じ内容の授業を日本語と英語の両方で行うという。海外の学生も履修できるというメリットに加え、言葉が弊害となって海外で活躍できない、日本人学生のデメリットを克服する意図もあるだろう。しかし状況は簡単ではなく「日本は居心地がいいようで、日本の中で完結する学生がほとんどという国内志向は深刻です。コンテンツ産業が停滞する、ひとつの理由になっているかもしれません」という

 金氏は現在、三田のメディアコミュニケーション研究所、日吉のメディアデザイン研究科、SFC(湘南藤沢)の政策メディア研究科などで教鞭を採っている。慶応大学の中でこれらの学部は、比較的PCの導入が進んでいるほうだという。

 特にSFCに関しては、PCは共同購入が可能で、学生は基本1台は所有している。まだ、オフィス系のソフトに比較すると、クリエイティブ系のソフトを利用する機会は少ないが、社会科学系でもプレゼンの能力が求められる領域、映像そのものを研究する学科では、意欲のある講師・学生を中心に、動画編集・画像編集のソフトが利用され始めている。

 例えば、メディアコミュニケーション研究所には、新聞社や放送局などで働きたいと考えている学生に向けた映像編集のゼミがある。学生がロケハンで映像を集めてきて、それを編集して発表する。テレビ局などで経験を積んだ講師がその手ほどきをする。こういった講義では映像編集のスキルが必須となるし、Adobe Premire Proのような動画編集ソフトが使われる。

 ただ、デジタルツールの可能性を理解しようとする教員はまだまだ少数派だ。

 「学生は柔軟なので、きっかけがつかめれば変わるのは早い。逆に教員の方は保守的なところがあるので、学生ほどフットワークが軽くない。教える側の意識改革が大きな課題だと思う。

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