ITの発達によって「つながる」ことが容易になった。しかしその一方で、人は「伝える」ことの困難さに直面することになった。そんな逆説的な感覚を持ったことはないだろうか。
「伝える」ことは、簡単に見えて実は多くのプロセスを要求される高度な行為である。情報の本質を見抜き、再構成し、受け手にとって適切な方法で表現する。それはインダストリアルデザインやインターフェースといったエンジニアの領域から、プレゼンテーションやコミュニケーションといったより身近なビジネスの現場でも本質的には変わらない。
クリエイティブであることは、かつては特殊な技能を身に付けた人々の特権であった。しかし、ITによって誰もが容易に情報を発信できる現代では、誰もがクリエイティブであることが求められている。
本連載では、IT(とりわけクリエイティブツール)が、これからの社会でどのように活用されていくか、またその将来を見据えて大学などの高等教育機関がどういった取り組みを始めているかを、連続インタビューの形で見ていく。第1回は慶應義塾大学デジタルメディアコンテンツ機構の金正勲准教授だ。