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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第49回

テレビの終わりは新しいメディアの始まり

2009年01月07日 11時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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ウェブはテレビ局のビジネスチャンス


 キー局の中でも、地上波からの脱却をはかっているのがフジテレビだ。特に「ワンセグ」に力を入れ、携帯端末への進出をはかっている。NHKも「NHKオンデマンド」を開始し、国際放送でもマイクロソフトと合弁会社をつくってIP放送を開始した。こうしたビジネスは採算が取れていないが、テレビ局がウェブに進出したことは朗報だ。これまで著作権法を理由にしてウェブ上のコンテンツ流通を妨害してきたテレビ局も、著作権の過剰保護を改めざるをえないだろう。IP放送料などの標準作りも始まっている。

 同じように、これまで電波を浪費して独占を守ってきたテレビ局も、多くのチャンネルで多角化しないと生き残れないだろう。特に電波の送出設備は彼らが持っているので、ホワイトスペースの開放で200MHzが免許不要で自由に利用できるようになれば、最大の受益者は映像コンテンツを大量に持っているテレビ局だろう。地上波は無料の同時放送しかできないが、ウェブを使ってIP放送すれば、有料配信もオンデマンド配信も可能だ。

 ただ最後に残る問題は、コンテンツをほとんど持っていない地方民放だ。彼らはキー局の番組を垂れ流して電波料と称する補助金をもらってきたが、そんな安易なビジネスモデルはもう通用しない。おそらく今年3月期には、地方民放の半分は赤字になるだろう。設備投資が数千億円でリターン(広告収入増)はゼロなのだから、当たり前だ。キー局が地方局を買収・合併することは避けられない。これを規制してきたマスメディア集中排除原則も緩和された。

 しかし業界の再編は進まない。各地方局には、その免許をおろした政治家の利権があり、ローカル放送を自民党が私物化している。統合すると、それがなくなってしまうからだ。しかしこの構造も、地方民放の経営が行き詰まれば、維持できなくなる。これまでは彼らは、経営が苦しくなるとキー局に補助金を求めてきたが、キー局もない袖は振れない。総務省も、苦しい財政状況で補助金の財源がない。

 だから2011年に向けて、地方局の再編が進むだろう。それを促進するためにも、形骸化したマスメディア集中排除原則は撤廃し、業界の再編を進めるべきだ。その代わり電波をすべてのユーザーに開放し、メディア業界を競争的な市場にする必要がある。その新しい産業で勝者になるのは、コンテンツを持っているテレビ局かもしれない。

 ピンチはチャンスである。


筆者紹介──池田信夫


1953年京都府生まれ。東京大学経済学部を卒業後、NHK入社。1993年退職後。国際大学GLOCOM教授、経済産業研究所上席研究員などを経て、現在は上武大学大学院経営管理研究科教授。学術博士(慶應義塾大学)。著書に 「ハイエク 知識社会の自由主義 」(PHP新書)、「情報技術と組織のアーキテクチャ 」(NTT出版)、「電波利権 」(新潮新書)、「ウェブは資本主義を超える 」(日経BP社)など。自身のブログは「池田信夫blog」。

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