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さくらインターネットの競争力に迫る!

あのCPUは、低価格レンタルサーバにも使われていた

2009年01月16日 04時00分更新

文● 大谷イビサ/ネットワークマガジン編集部

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サーバ開発は集積密度と放熱の効率性がポイント

 ホスティングで使うサーバが全部メーカー製かというと、そんなことはない。他社も含めて、コストパフォーマンスを重んじるホスティングという事業では、意外と自作PCに近いものも数多く使われているのだ。さくらインターネットの技術部主任である加藤直人氏は「ラックをいかに効率的に使うかはつねに課題でした。開発がスタートした5年前くらい前も、コストパフォーマンスや放熱、消費電力などを考えたとき、できあいのモノでは満足できませんでした。こうした状況をサーバの自社開発で一気に解消しようと考えました」と語る。同氏は、さくらインターネットで提供するサーバの開発を手がけ、おもに専用サーバサービスの拡充に努めてきた。

さくらインターネット株式会社 技術部 システムソリューションチーム 主任 加藤直人氏
さくらインターネット株式会社 技術部 システムソリューションチーム 主任 加藤直人氏

 データセンターのサーバ収容は、とにかく集積密度が命。限られたスペースに多くのサーバを設置することで、サービスも安価に提供できる。「一番いいのは電気を食わないで、熱を出さないで、ラックに大量に収容できるサーバです。ですが、なかなかそれらを同時に満たすのは難しいです」(山下氏)。確かに、こんな課題を全部解決するサーバはなかなかないだろう。しかし、集積密度を追求するが余り、製品が高価になったり、放熱効率が落ちるのでは、サービスの競争力を欠くことになる。そのため、同社が選択したのが「その時々でもっともコストパフォーマンスの高い部品を使ったサーバの自社開発」である。以下、同社のサーバの歴史を見てみよう。

 同社のサーバ開発はPentium3/4を搭載したホワイトボックスのラックマウントサーバからスタートし、先進的なブレードサーバの導入まで行なった。このブレードサーバに搭載されていたのは当時インテルやAMDなどの大手が注目していなかった低電力消費をメインに開発されたCPU「Efficion」。さくらインターネットではこのEfficion搭載のブレードサーバをいち早くサービスに投入したという。

サービスに導入されたEfficionを搭載したブレード
サービスに導入されたEfficionを搭載したブレード

 次に同社が開発したのが、AMDのSempronを搭載するコストパフォーマンスの高いサーバ。グリーンITが注目されるはるか前から、こうした低消費電力化の取り組みを進めていたのだ。サーバは6Uのシャーシに縦に収容するタイプで、2008年の4月まで現役だった機種だ。このサーバのユニークなのは、ラック内の空冷を重視し、ケースに覆われていないフレーム型の筐体であること。同社のデータセンターでは、床から天井に向けてラック内に風を吹き上げる冷却システムを採用しているため、こうしたフレームサーバを採用することで、効率的に放熱できる。グリーンITが注目されるはるか前から、こうした放熱対策や低消費電力化、収容の効率化といった取り組みを進めていたのだ。

空冷を重視し、外型が金属等で覆われていない。まさにデータセンター仕様のサーバといえる
空冷を重視し、外型が金属等で覆われていない。まさにデータセンター仕様のサーバといえる

 その後、同社はCeleronやPentiumM、Core2、XeonなどCPUを変えながら、自社開発のサーバを次々サービスに投入した。そして、最新のサーバは、ご存じインテルの低消費電力CPU「Atom」を搭載したサーバだ。前述した月額7800円の専用サーバのサービスはこのAtomサーバで提供している。パフォーマンス的にはやや落ちるものの、160GBのHDDを搭載しており、専用サーバとしては十分だ。加藤氏は「サービスはCPUだけでは、あまり選ばれません。Atomであっても、サーバを専有できる点に意味があります」と語る。

MiniATXのフォームファクタを採用した最新のAtom搭載サーバ。電源が外部にあるため、中身はかなり余裕がある
MiniATXのフォームファクタを採用した最新のAtom搭載サーバ。電源が外部にあるため、中身はかなり余裕がある

 このAtomサーバは、電源搭載のエンクロージャにブレードを挿す形態であるため、ブレードサーバのジャンルに入れられる。それゆえ集積密度がきわめて高く、8枚のブレードを収容可能なエンクロージャが9段詰め込めるため、1ラックあたり最大72台のサーバを収容することが可能だ。こういうのを圧縮陳列とはいわないだろうが、写真を見ると、確かにすごい収容密度である。

4.5Uあたり8台を詰め込み、これを9段詰め込んでサーバをラックに収容している。すごい集積密度だ
4.5Uあたり8台を詰め込み、これを9段詰め込んでサーバをラックに収容している。すごい集積密度だ

もちろん、市販されているメーカー製のサーバでもスペック上はこうした集積密度は実現できるが、「ラックという単位だと、消費電力や熱の問題でフルに搭載するのは難しいんです。一世代前のブレードサーバだと、エンクロージャ間を空けて2~3段程度積むのが精一杯だと思います」(加藤氏)とのこと。確かに、隙間が空いていたら、ラックが無駄ですよね。

 その他、コストではなく、パフォーマンスを重視するユーザーのための、メーカー製のサーバも用意している。Core2 DuoやクアッドコアXeonなどを搭載したサーバ、あるいはRAIDでのデータ保護機能を持ったサービスなども用意している。

 こうしたサービスに合わせたサーバ開発が可能である理由として、さくらインターネットでのエンジニアの数が多いという点が挙げられる。山下氏は「データセンターは、サーバやネットワークのほか、電源や空冷などいろいろなスペシャリストが必要になります。その点、弊社はエンジニアが多く、体制的にこうしたサーバの開発も可能なのです」と述べている。


 (次ページ、ますます高密度化を実現。開発中のサーバを初公開!に続く)


 

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