パワードスーツに、気味の悪い4速歩行ロボ「BidDog」
瀬名 「2nd GIG」(「攻殻機動隊 S.A.C.2nd GIG」。SACの続編)では、ほかのレンジャー隊が突入してきたときに、光学迷彩同士の戦いになるのですが、バトー達が水をまいたりしていました(足跡で分かる)。ほかにも、4脚ロボット「BigDog」。これも数年前に櫻井さんと対談したときに、僕が紹介したのですが、最近はさらに進歩してまして。Youtubeに映像が上がっているから見てほしいのですが……
櫻井 蹴っ飛ばしても転ばないという。
瀬名 これ蹴っ飛ばすとなんだか、虐待している風に見えますよね?(笑)
櫻井 見えますねえ(笑)。かわいそうになる。
瀬名 なんでこんな歩き方をさせるんですかね、コレね。
櫻井 なんか……あのー、なんででしょうね。この間Youtueを見たら、人間が二人羽織みたいになってBigDogのまねをしている映像が上がっていましてね、面白いことを考える人たちがいるなと思いましたけれども(笑)
瀬名 パワードスーツも実際にはあります。攻殻機動隊を最初のからずっと観直してきたのですが、実現しているものと、意外とそうでもないな、というものもあるかなと。たとえば、光学迷彩みたいなものは、それこそ攻殻から発してファンの研究者たちが実際に作り始めたりとか、パワードスーツみたいなものも、かなり最近現実化しつつありますよね。
それからサイボーグも、東北大学でもやっていますが、「医工学研究科」という大学院が2008年4月に新設されまして、人工網膜の研究 ――見えないものを見えるようにさせるわけですけれども―― エンハンスさせるわけで、たとえば紫外線とか赤外線とかね……
櫻井 見えるようにすると
瀬名 できるかもしれない。一方では、たとえばナノマシーンとか、ああいうのはまだ少ない。それから、ロボットと人間を、どのように役割を分担させるかというところが、攻殻の世界観と、わりと重なっているところとそうでない所があるかなと。
東北大学の研究を1つ紹介しますけれども、これ、実はテロ対策の研究でもあるんですね。
東北大学の機械系は、レスキューロボットの研究をなさっているところも多いんですけれども、その中でこういうクローラー型のロボットを使ったりしているんです。こうしたロボットを市街地で遠隔操作するというのは、これまでなかなかできなかったんですね。通信が届かなかったりという問題があるみたいです。
櫻井 そうですね。真っ先にそのことを思いますね。
瀬名 仙台市の地下街は大きいんですが、ああいうところで、たとえばテロが起こって、人間が入れない、毒ガスがまき散らされたという時に、クローラー型のロボットを中に入れて、人がいるか、瓦礫がどうだというのを探査するわけです。このロボットは、実際に動きながら、三層構造になっている仙台の地下街を、ずっとスキャンしていくと。これまさに攻殻機動隊の絵に、かなりそっくりだなと見ています。
櫻井 サンダーバードやウルトラ警備隊のメカを思い出しますね。かっこいいですよね。このキャタピラは。
瀬名 ロボット自体がマップを作りながら世界を観察できるというね。マップとロボットの操縦というのが、かなりシンクロしてきている。バーチャルリアリティの研究として非常におもしろいと思っています。こういうのは、割と実現している。一方ではたとえば、SSSでは「MM(マイクロマシーン)ウイルス」というものがあるわけですけれども、あれは「復活の日」とかをイメージしました?
櫻井 おそらく士郎正宗さんがそれを意識したんだと思うんですね。今は「ナノマシーン」の方が一般的にコトバとしては定着しちゃったんですけれども、原作の方にはマイクロマシーンと書いてあるので、それを踏襲してマイクロマシーンと言っていますけれども。
瀬名 ああいうのはまだまだむずかしいというところでしょう?
櫻井 そうですねー。10年後くらいであればーまた状況も変わっていそうですけれども。
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