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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第16回

ソニーが送るNetbookキラー? VAIO type P解体天国(後編)

2009年01月08日 18時00分更新

文● 西田 宗千佳

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もしかしてWindowsいらず?
Firefox搭載で実用度の高い「インスタントモード」

type P内部の主要コンポーネント

type P内部の主要コンポーネント

 前編で述べたように、type Pは「PCとしての価値」を重視した製品である。だが、WindowsというOSのもつ限界が、快適さをそぐ部分があるのも事実だ。

 たとえばVistaの起動。type PでVistaが起動するまでには、最低でも数分かかる。休止状態からの復帰でも、やはり1分以上はかかるだろう。携帯電話のように「ぱっと開いてさっと使う」のは難しい。

 そんな問題を解決するために採用されたのが、「インスタントモード」だ。Windowsでなく、Linuxを軽量にカスタマイズしたOSを内蔵。電源オフの状態で、キーボード手前右のXMBボタンを押せば、数秒で起動する。

クロスメディアバースタイルのインスタントモードを備える

 これはソニー独自の発想、というわけではない。市場にある製品としては、ASUSTeKの「Express Gate」やLenovoのNetbook「IdeaPad S10e」などでも採用されている。ちょっと違うのは、デザインと操作方法が、PSPやブラビアなど、ソニー製品で使われている「クロスメディアバー」(XMB)になっている、という点だ。

鈴木「以前からインスタントモードは実装していましたが、DVDやCDの再生が主な用途でした。type Pのインスタントモードでは、動画や音楽、写真の再生だけでなく、ウェブブラウザーとSkype、メッセンジャーが搭載されています。ワイヤレスWANやUSBを介しての通信はできませんが、無線LANでの通信は可能です」

 インスタントモードというと「簡易型のブラウザー」が搭載されている、という印象を持ちそうだが、type Pはそうではない。Firefox 2.0(フルバージョン)にFlashプラグインを組み込んだものが搭載されていて、PC用のウェブサイトが完全に表示可能だ。Gmailなどのウェブアプリケーションはもちろん、YouTubeやニコニコ動画などの動画サイトも閲覧可能。当然、日本語表示/入力も可能だ。日本語入力ソフトとしては、Linuxを使ったことのある人にはおなじみの「Anthy」が組み込まれている。

インスタントモードからFirefoxを使えるので、Windowsを使わずに多彩なウェブアプリケーションを利用できる

鈴木「インスタントモードなら15秒くらいで起動します。想定としては、電車を待っている5~10分の間に使ってもらいたい。フル機能のブラウザーがのっているので、ウェブアプリケーションのほとんどが使える、というのが大きいです」

 GoogleドキュメントやGoogleカレンダーといったウェブアプリケーションを使えば、これまではWindowsでなければできなかったこともできる。「クラウドを活用する」という前提にたてば、インスタンドモードだけで相当なことができるわけで、type Pの大きな魅力のひとつといっていいだろう。

 ちなみに、メッセンジャーとして組み込まれているのはオープンソースの「Pidgin」。MSNやAOLなどの主要サービスに対応している。なお、メディアプレイヤー系の機能で呼びだすデータは、Windows上で指定の場所に保存しておく。動画はハイビジョン動画の再生にも対応しているが、残念ながら、SCH内蔵のハードデコーダーは使われないという。


合体させて持ち運べ!
「なくさない」「忘れられない」アダプター

 type PのACアダプターは、本体同様非常に小さい。コネクターも従来のVAIOに比べ細く、小さなものだ。

ACアダプター(中央)とディスプレイ/LANアダプター

ACアダプター(中央)とディスプレイ/LANアダプターは、合体してまとめて持ち歩ける。合体状態でも一般的なモバイルノートのACアダプターとそれほど差がないサイズで済む

鈴木「今回初めて、10.5Vタイプのものを使いました。サイズ的に、このコネクターしか入らない、という事情もあったのですが。結果的に急速充電などの機能も搭載できました」

 ACアダプターにはさらに秘密がある。外部ディスプレーおよびEthernet端子を接続するための「ディスプレイ/LANアダプター」と合体して、「1本の棒」になるのだ。

鈴木「アダプターについては『持って行くのを忘れる』『なくす』と多くのご意見をいただきました。『ならば、なくさないように、忘れないようにしよう』と、ACアダプターにくっつくようにしました」

 type Pはこれまでの「超小型VAIO」に比べて、非常にシンプルなデザインになっている。そのため、一見「ガジェットとしての遊びが足りない」印象も受ける。だが、そういう部分はこのACアダプターが担っているのだろう。

 パソコンとしての使い勝手を保持したままの「小型PC」というのは、意外と出てこなかった。Netbookを使っている人の中には、Netbookにそうした「欲しかった小型PC」の姿を見た人も多いのではないだろうか。

 そういう見方をすれば、type Pは「ユーザーが望むものを、ストレートに実現したVAIO」といえるかも知れない。Netbookに比べれば高いのは事実だが、見て触れてみると、「ああ、これならそうだよね」と納得できるだけの内容を持っている。


筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)。1月13日に「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新聞出版)が刊行予定。


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