モバイル=コンピューティングの世界観
松村 これから数年は、モバイルコンピューティング=コンピューティングになる時代だと思っていますが、その世界観、グランドデザインについて話していきたいと思います。
林 僕は講演のたびに、ケータイがリモコンになる、リモコンになる、と言い続けてきました。実際、家に帰ってテレビを見るときにケータイの赤外線リモコンを使っています。この赤外線が、IP接続になって、テレビがネット家電に変わる。そういった流れで、2008年に感銘を受けたのはYahoo! JAPANとシャープのコラボレーションでした。
SoftBank 923SHで液晶テレビのAQUOSに向けて操作すると、Yahoo! JAPANのコンテンツが出てくる。僕のケータイでアクセスすると僕のコンテンツが、松村さんのケータイでアクセスすると松村さんのコンテンツが出てくる。個人認証も兼ねているんです。
松村 僕もまさにその件でYahoo! JAPANに取材をしたんですが、面白いサービスですね(関連記事)。ノートパソコンなら自分のディスプレーだし、iPhoneのディスプレーはWeb 2.0につながった自分のディスプレー。
でも、自宅の薄型テレビは家族のディスプレーだし、山手線の額面にあるデジタルサイネージは乗客みんなでシェアしているディスプレーですよね。生活の中でいろいろなところでディスプレーを目の前にしていますが、それが自分のディスプレーである瞬間は少ない。家族のディスプレーだったテレビを自分のケータイで操作すると、テレビが自分のディスプレーになる。これはとても気持ちいいし、自宅への帰りの電車に乗っている最中から見ていたコンテンツをそのままテレビの大画面に引き継げたら、デジタルコンバージェンスやクラウドというキーワードを体現する1つの未来だと思いました。
林 これは世界展開をして欲しいですよね。
松村 それから、もう1つあります。iPhoneのアプリは当然のようにWi-Fiを使って手元にあるMacBook Airを操作できますよね。プレゼンのスライド送りやマウス、キーボード、テンキーにもなるし、フィードバックも返ってくる。双方向のネットワークを使ったリモコンはここまでインテリジェントなのか、と驚かされます。
林 そろそろ具体的なサービスに入る「フェムトセル」と呼ばれる狭いエリアのモバイルネットワークがあります。有線のネットワークは光ファイバーでいくらでも敷けますが、無線の部分はパンパンになってきた。だからフェムトセルが必要、という話でしたが、スマートフォンにはWi-Fiが入っているので、Wi-Fiがフェムトセルの役割を担い始めたかもしれません。これだけ普及している狭所のネットワークはなかなかなくて、ケータイの通信容量を補完したり、位置情報の特定につながったり、店舗に用意すれば、店舗内の情報提供もできる。
松村 放送と通信の融合という言葉がありましたが、融合ではなく、再構成という言葉が正しいんじゃないかと思っています。渋谷駅前でも、ワンセグのエリア放送の実験が始まりますし。また久々に実家に戻ったら、近くの商店街に電子マネーが浸透していました。八百屋でネギがPASMOで買えるようになっててびっくりしました。こういう商店街とワンセグのエリア放送が始まれば、商店街に入ったらワンセグで情報を得て、ケータイに入っている電子マネーで買い物をする、というスタイルがもう実現できるところまで来ています。もちろん、コンテンツやサービスを再構成していく必要はありますが……。