リアルタイム性を楽しむ「~ in Your Pocket」
松村 ノキア自体は日本向けに端末を出さないと発表しましたが、VERTUだけはこれから立ち上げてやっていく。気軽に買えるような値段ではないですが、世界中でケータイの最高のサービスが受けられるようになるはずです。でも、それをシステムで実現しようとしているのが、ドコモのi コンシェルやauのエージェント機能ですよね。今のところは正確性や実現までの時間で、ヒトのコンシェルジュの方が早いと思いますが……。
一方で、林さんが時々やっているのは、例えば大阪に行ったときに、iPhone向けTwitterクライアントの「Twinkle」で「この周りにおいしいお店ない?」と問いかけていますよね。すると地元の通しか知らないグルメ情報が届くというものです。
林 iPhoneで顕著に現れた2008年の傾向を僕は「Web 2.0 in Your Pocket」と呼んでいるのですが、一番便利に使ったツールがTwitterでしたね。あれでどこへ行っても情報がありすぎて悩んじゃう、という状態が作り出せた。
松村 これは、VERTUのようなパーソナルなコンシェルジュサービスというよりは、オープンな、ソーシャル・コンシェルジュサービスが林さんの周りにはでき上がっている気がします。
林 「Yahoo知恵袋 in your pocket」あるいは「OKWave in your pocket」といったところでしょうか。
松村 人力検索を、リアルタイムに、使うヒトやエリアを限って活用するという手段で、GPS+Twitterというインターフェースがすごく大きいですね
林 いろいろな情報を見つけ出したり、トラブっているときに24時間誰かが助けてくれたりするのはもちろんですが、それ以外にも使えます。
例えば、セミナーのパネルディスカッションにもとてもマッチしていると思います。パネルディスカッションの場で、素晴らしいパネラーを呼んでも、いかに会場と一体感を持たせるかが運営側の悩みでした。
ところが、海外ではハッシュ(#)でTwitterの発言にタグをつけ始めるという流れが出てきました。例えば、この間デジタルガレージが開催したNew Context Conferenceだと、「#NCC2009」がタグになる。Twitterの発言やFlickrの写真などにこのタグをつけ、タグを検索すると、今やっているイベントの発言がリアルタイムで分かるようになる。壇上からそのタグを見ながら、そちらに話を振ってみることで、ディスカッションを盛り上げることができます。
Twitterは今年に入って、SummizeというTwitter検索のベンチャーを買収して、検索サービスに力を入れています。このhttp://search.twitter.com/にアクセスすると、今、この瞬間、世界が何の話題でもりあがっているかも見ることができます。
松村 最近だと、慶應大学SFCのオープンリサーチフォーラム(ORF)で、夏野(剛)さんや古川(享)さんらが登壇するディスカッションがあった。そこでも「#ORF」というタグをみんな付けていたので、僕は行かなかったのに、会場の質疑応答や雰囲気まで分かりました。これは明らかに、ヒトの目や耳を拡張できていますよね。
林 今はTwitterだけでも十分追いかけられますが、これが写真のFlickr、動画中継のUstreamなどを含めて串刺しで検索できると、さらに世界が変わってくるでしょう。
松村 「#」を束ねると相当仮想体験に近いことができるようになって、また1つ世界が変わる感覚があります。