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山谷剛史の「中国IT小話」 第39回

権威失墜する中国のアキバ

2008年12月25日 10時00分更新

文● 山谷剛史

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アキバの「いつか来た道」を歩む中関村


 異常事態の理由は、中国版不動産・株バブルや金融危機も少なからずある。しかし「それ以上に大きな原因がある」と中国メディアは分析する。

電脳ビルが並ぶ中関村

 ひとつは「中関村の遠さ」だ。北京は北京オリンピックを契機に地下鉄を複数路線開通させ、中関村の下にも近所にも通しているが、それでも中関村は遠すぎる。

 旧北京市街を囲む城壁跡の環状道路の下に、環状線状の地下鉄2号線が走っているが、中関村はその外側の環状道路のそのまた外側の環状道路沿いにある。日本で関東圏に住んでいる人に分かりやすく説明すると、ビジネス街は東京~新橋あたりにあるのに、中関村は埼玉の川越にあるようなイメージだ。

中関村では、アニメ関連を扱う店がぽつぽつと出てきた。そういった意味でもアキバ化していくのだろうか

 実際の距離はそれほど離れていないが、オリンピック前のバスしかなかったころは当然のこと、地下鉄が走る今も、北京の中心から中関村に行って買い物をしようとすれば半日は軽くかかる。それでも中関村しかなかったころは買い物客でごった返していた。



電脳街からネットショップへ移行する北京


 外資系企業がそれなりにある北京だからこそ、金融危機の波が直にやってきたことが中関村離れに影響した。それは「お金に余裕がないからPCやPCの関連製品を買うのをやめた」ではなく「お金に余裕がないから、今まで手を出さなかったインターネットショッピングに手を出す」ということである。

北京の中心に登場した中関村を脅かす、北京朝陽区の百脳匯

 「少しいいモノを安く買おう」「高いモノを勢いで買わず、一歩引いて再考して買おう」という風潮となった北京で、オンラインショッピングでの購入が加速した。北京は中国のほかの地域に比べて、インターネット普及率もオンラインショッピング利用率も家庭でのパソコン所有率も高く(所得で上回る上海よりも高い)、すでに家や職場でオンラインショッピングできる環境は整っている。所有するPCのアップグレードパーツの購入や、(買い換えを含めた)2台目のPCの購入でオンラインショッピングサイトを利用できるのだろう。

 また中関村は、強引な客引きや詐欺がひどく、中国一悪名高い電脳街としても有名だ。数年前までは腕をつかんで客を強引に店舗に引き込む店員がいた。さすがにルールが決まってNGとなったのか、強引な客引きは見かけなくなくなったが、それでも中国の他の都市の電脳街と比べてとりわけひどいのには変わらない。

大手家電チェーン店のひとつ、蘇寧電器

 またメーカー希望価格がある製品ですら、PCの素人に対してはデタラメな価格を言い、ボッたくるトラブルが絶えない。他の都市の電脳街はもう少し良心的だ。その背景には、中関村のテナント料がうなぎのぼりに上がっている状況がある。

 テナント料が上がる一方利潤が下がり、「なんとかして維持しよう」とある店は詐欺に走り、ある店は儲からないから店を畳む。また元々詐欺話がよくある場所だからこそ、詐欺をしてもさほど後ろめたくない、というのもある。見出しには「アキバのいつか来た道を歩む中関村」と書いたが、詐欺に関してはアキバにはない中関村ならではの特徴であることを念のため付記しておく。

 中関村の遠さと悪評は、北京市民には広く知られているので、敢えて危険を冒して安く買うよりは、オフィス街に近い朝陽区の電脳ビル「百脳匯」や、北京市内に点在する「国美電器」や「蘇寧電器」といった、大型家電チェーンで済ませてしまおう、という動きが加速している。

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