コンバーチブル型で「普通のパソコン」として使える
ペンのメリットは「気軽なメモ」に
タブレットPCには、キーボードを持たないか、取り外せて軽量な板状になる「スレート型」と、一般的なノートに近い「コンバーチブル型」がある。2730pは後者だ。ディスプレーと本体は分離せず、ヒンジによる回転機構を採用している。ヒンジは堅めで据わりもよく、ぐらつきなども感じられない。ただし、「全角/半角」や「Ctrl」など、操作性に関わるキーが一部小型化されているのは残念なところである。
実のところ、現在は一部の特定市場向け製品を除き、タブレットPCはほぼすべて「コンバーチブル型」になっている。スレート型はキーボードが付いても「首の据わり」が悪く、キー入力時に不快感がある。それに対してコンバーチブル型は、ディスプレーを回さなければ普通のノートに近く、操作感も良い。
「タブレットPCならペンを多用するんじゃないの?」と思われがちだが、実際に使ってみると、そうではないことがわかってくる。
大量の文字を高速にタイプするには、やはりペンよりキーボードの方がいい。アイコンのクリックやウェブの閲覧といった一般的な操作にしても、ペンよりもマウスやタッチパッドの方が楽だ。私がタブレットPCを仕事に使っていた時にも、操作の8割はペン以外で行なっていた、という印象を持っている。
「じゃあ、ペンはいらないんじゃないの?」と言われそうだが、そんなことはまったくないと断言できる。ペンは「ちょっとしたメモ」に使うのである。
たとえば、画面の縦横比からサイズを出すとか、映像のビットレートから各記録ディスクへの収録時間を割り出すといった、ちょっとした計算をするとき、皆さんはなにを使うだろうか? Excel? それもいいだろう。だが、比率計算で軽い立式が必要な場合や分数計算をする場合には、Excelを使うよりも、紙に式を書いた方が早いという場合も多い。
また打ち合わせの際に、図版をその場で描く、ということも多いだろう。そこでいきなり作図用のソフトを起動する人はほとんどいない。紙にペンで書いて見せるのが常だ。
日常にはこういった、「キーボードでは入力しづらいちょっとした手書きメモ」が多い。結局は紙を使うことになるのだが、散逸しがちだし、試行錯誤の時に「消す」のも面倒だ(アイデアなら、あえて消さないのもアリだが)。
タブレットPCのペンは、そんな時に最大の威力を発揮する。さっとソフトを開いてペンで書き殴っていけば、それがそのままデジタル文書化される。消したい時も、消しゴム機能を使えばきれいに消えてくれるし、紙と違ってサイズや「枚数」の制限も小さい。
言い方を変えれば、「無限大の、なくならない模造紙が手元にある」ような感覚である。
現在筆者は、軽量で持ち運びやすい適当な製品がみあたらないことから、メイン機材としてはタブレットPCを使っていない。だがそれでも、普通のパソコンで作業をしているときに、紙などで計算やアイデアメモを書きながら、「ああ、これがタブレットPCなら……」と思う瞬間が少なくない。
使ってみないと分かりにくい感覚かもしれないが、これこそが、「ビジネスにタブレットPCは便利である」という点なのである。
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