一時期に比べ、タブレットPCの新製品は大きく減っている。使ったことのない人にとっては、「失敗したモバイル向けプロジェクト」というイメージがあるのではないだろうか。
確かにタブレットPCは、「普及台数」から言えば成功とはいえないプロジェクトだろう。しかし実際に使ってみると、タブレットPCは特にビジネス向けのツールとして、非常に価値の高いものである。
今回試用するヒューレット・パッカードの「HP EliteBook 2730p」(以下2730p)は、タブレットPC機能を備えたビジネス向けのモバイルノートだ。この製品から、「現在のタブレットPCの姿」を探ってみよう。
vPro採用のビジネスノート
OSはダウングレード版XPも
スペック面で見た2730pは、Core 2 Duo SL9400(1.86GHz)を搭載した、一般的なビジネス向けモバイルノートといえる。重量こそ約1.7kgと重いが、ワールドワイド仕様のモバイルノートとしては標準的な仕様であり、「タブレットPCだから重い」というわけではない。
コンシューマー向けノートとの最大の違いは、高度なセキュリティーと管理機能を求められる企業向けパソコンのニーズを満たすため、インテルの「vPro」プラットフォームに対応しているということだ。スタンドアローンで使う場合には、ドライブの暗号化などの面で役に立つ。
vProに対応してはいるが、暗号化を中心としたソフトの一部は、HPが同社のソリューション向けに用意しているものが搭載されている(画像)。個人認証向けに指紋認証機能を備えるといったあたりは、同社のほかのビジネス向けモバイルノートと共通の仕様である。設定などもわかりやすく、使い勝手も良好だ。
今回試用した2730pは、OSに「Windows XP Tablet PC Edition 2005」を搭載したモデルだ。正確にはWindows Vista Businessの「ダウングレード権」を利用して、Windows XP Tablet Editionをプレインストールして出荷される商品である。そのため本体背面にある証書の表記も、XPではなくVista Businessである。
また、XPで必要なスペックにあわせてか、メモリーの容量は1GBと少なめである。本体には2つのメモリースロットがあるのだが、その片方に1GBのSO-DIMMを差し込んだ状態だ。とはいえ、OSがXPであるためか、1GBでも特に問題は感じない。「最新のプラットフォーム+XP」という組み合わせなので、動作が妙に速く感じられるくらいだ。もちろんOSをVistaにして、メモリーを増やした構成で発注もできる。
バッテリー動作時間は最大6時間。本体裏面に装着する別売の「スリムバッテリ」をつけると、最大12時間になる。今回は標準添付のバッテリーのみでテストしたが、無線LANを併用しての動作時間は3~4時間半といったところ。おおむねスペックからの期待通り、というところだろう。
無線LANを常に使っている状態で4時間以上持つのだから、それなりに実用的と考えて良い。スリムバッテリをつければ、そのまま倍になると考えられる。
ハードウェア面での最大の特徴は、もちろんペンで操作できることである。12.1型ワイド/1280×800ドットのディスプレーには、ワコムの電磁誘導タブレットが内蔵されており、付属のペンで操作できる。感圧系センサーは内蔵されていないので、指での操作はできない。もちろん、はやりの「マルチタッチ」機能もない。
電磁誘導式は、専用のペンが必要というデメリットがあるものの、逆にいえば「手で触っても反応しない」というのが大きなメリットでもある。
筆者は市場に出たタブレットPCをほぼすべて触っているが、ディスプレーサイズが8~9型クラスのものならともかく、それ以上のサイズだと「感圧のみ」では使いづらい、という印象を持っている。ディスプレーサイズが大きいと、どうしても手などがあたって誤動作しやすい。12.1型はA4をひとまわり小さくした程度の大きさなので、どうしてもペンを持つ手やボディーを支える手が、ディスプレー面に触れてしまうのを避けられない。
理想を言えば、コンシューマー向けの「Pavilion Notebook PC tx2505」などで導入されている、感圧/電磁誘導式の両方を搭載したタイプの採用が望ましい。だがコストの問題もあるのだろう。
ただし、ペン機能を「UIの操作」にあまり使わないのであれば、感圧式がないデメリットは、さほど感じることはないだろう。

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