「あの声」はこう作る!
── 例のボーカルサウンドは、どういう経緯で生まれたんでしょう?
ヨナオ イベント用の曲を準備していたんですが、嘘っぽくても良いから声に聴こえる音が欲しいと。それでいじっていたら、どんどん声っぽくなってきて、これは皆ビビるんじゃないかと。
── ええ、ビビりました(笑)。これ、LFOを使ってピッチベンドのような挙動をさせてますよね?
ヨナオ そうそう。ちょっと民族音楽っぽいですよね。あそこのニュアンスにはちょっとしたテクニックがあって。
── ふむふむ。みんな、ここが大事なところだよ!
ヨナオ まずピッチをLFOで揺らしているんですけど、普通にやると頭からビブラートがかかっちゃう。ビブラートは少し時間が経ってからかかってほしいわけですよ。
── DS-10のLFOは変調がかかるタイミングを設定できない。音を伸ばすにつれビブラートが深くなるような設定はできない、と。
ヨナオ だからどうしたもんかな、と。それで基本はLFOがかかった状態にしておいて、カオスパッドのX軸をPITCH IN INTに設定します。シーケンサーの設定をまん中にすると、ビブラートがかかっていない状態にバランスさせます。それでボーカルのこぶしが入るところだけ、ぐっと持ち上げる。
── シーケンサーでビブラートのかかるタイミングと深さを制御してやるということですね?
ヨナオ そうですね。それ以外の設定はごくシンプルだし、音色の設定自体もこんなの見たことない、という部分はないです。バンドパスフィルタで中域に寄せて。三角波とノコギリ波にしてあるのは、ちょっと厚みを付けて、声を太くしたかったから。
── なるほど、音色設定はごくオーソドックスですね。
ヨナオ すごく単純なんですね、これが。(前回のコルグ開発部の)金森さんみたいな難しいことは全然やっていません(笑)
── いや、でもこれはコロンブスの卵ですよ。声っぽい音で気を使うところはありますか?
ヨナオ アタックを緩く、リリースを長めにするので、次のパターンへつなぐときに、意図しないピッチやフィルタの挙動が入ることがある。それを防ぐために、ゲートの短い、ボリュームを0のデータを発音の前や後に入れておく、ということはやりますね。
── 音を切ることで、前後のパターンからパラメータを引き継がないようにするわけですね。
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