端末メーカーに変革を迫る2008年
2008年は端末メーカーにとっても大きな決断を迫られることが多い年だった。
3月3日に三菱電機はケータイ端末の事業から撤退してしまった。現在はパナソニックモバイルの端末で復活した「スピードセレクター」や、ワンセグの録画やサマリー再生、スライド型など、固定ファンが多かったメーカーだけに、惜しまれる撤退だった。またソニー・エリクソンのドコモ撤退報道が出た。報道は否定したものの、2008年の秋冬モデルにソニー・エリクソン製端末は並んでいない。
そして11月27日発表された、ノキアの日本での端末販売の撤退もまた惜しまれる。今後はVERTUという高級ブランドケータイに特化していくという。ユーザーから見ていても、メーカー側がとても揺れ動いた1年だったという実感があったのではないか。
「今の日本のケータイ市場には、ユーザー、キャリア、メーカーが存在しますが、メーカーは本来ユーザーが欲しがるモノを作るべきです。しかし、キャリアに納入し、キャリアのブランドで販売する方式を採っているため、キャリアに買ってもらえるモノを作るビジネスモデルでした。そんな中、iPhoneはキャリアを無視して、コンシューマーが欲しがる製品を作り、人気端末になりました。すると世界中のキャリアから、うちでも出させてくれ、と殺到し、これまでのメーカーとキャリアの立場が入れ替わってしまったのです」(林氏)
キャリアが間に入る端末メーカーとユーザーの関係性がiPhoneによって変わってしまい、メーカーとユーザーが直接対話する状況が生まれた。これも林氏が指摘するiPhoneによる変化の1つである。
さらに、今年Touch Diamondで注目を集めたHTCは、欧米の国々でそうしてきたように、日本でもイー・モバイル、ドコモ、ソフトバンクから同じ端末をリリースした。これは、端末メーカーのブランドが今まで以上に際立つし、ユーザーも、使いたい端末をあらかじめ決めてからキャリアを選んだり、自分のキャリアで使いたい端末を選ぶ、という端末選びの自由さをもたらす。
iPhone自体は日本ではソフトバンクでしか利用できないが、端末やメーカーの色をより全面に打ち出し、マルチキャリアで端末を提供する戦略へと移行する契機になったことは確かだ。
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