ハードの完成度はきわめて高い
サスペンド復帰速度などMac OS Xの魅力も光る
ハード的に見れば、MacBookはきわめて魅力的な製品である。性能が高くてデザインも良く、操作性も快適で価格も十分リーズナブル、とくれば正直減点するところがない。
気になるのはやはり「Mac」という点だろう。昔に比べるとずいぶん敷居は低くなっているが、それでもMacとWindowsの間ではカルチャーが大きく異なる。文字コードや改行コードの扱いの違いを中心に、覚えねばならないことも多い。「自分には欠かせないソフトやサービスが使えない」という人も少なくないだろう。
長くWindowsを使ってきた人であれば、Boot Campによるデュアルブートや、「Parallels Desktop for Mac」「VMWare Fusion」といった仮想環境を使い、Windowsを併用するのが現実的である。それらのコストを考えると、本体価格+数万円が必要になる。増設用のメモリーと同時にDSP版のOSを買う、というのが現実的だろうか。しかしそこまで加味すると、MacBookは決して「安価なノートパソコン」とは言えない。
だが、長くWindowsを使っている人にこそ、「Macも一度触ってみてほしい」と感じるのも事実である。Mac OS Xは、ハードと一体になって出荷されるものだけに、ハードとOSのチューニングが「汎用OS」であるWindows以上に進んでいる印象を受ける。
たとえばサスペンド。MacBookに限らず、Mac OS X搭載機のサスペンドからの復帰は「ほぼ一瞬」。新MacBookで実測してみた結果、下記表のように1秒半程度となったが、体感上は一瞬、という言葉がしっくりくる。それに対し、手元にあったVista搭載ノートパソコン2機種でのテスト結果は、5秒強~10秒弱とばらつきが出た。ちなみに、同じMacBookでWindows Vista Ultimateを使った場合、サスペンドからの復帰には8秒かかっている。
表2 サスペンドからの復帰時間。サスペンド状態のパソコンが、サスペンドから復帰して作業ができるようになるまでの時間を計測 | |||
---|---|---|---|
OS | 復帰時間 | ||
新MacBook | Mac OS X | 1.5秒 | |
Vista Ultimate | 8.2秒 | ||
NEC LaVie J LJ750/JH | Vista Home Premium | 5.3秒 | |
Dell Inspiron mini 12 | Vista Home Basic | 9.7秒 |
「ほんの数秒じゃない……」と思われそうだが、使ってみるとかなり違う。Vista搭載機の場合、その数秒の間、表示がブリンクしたりする機種もあり、微妙な不安を感じた。MacBookなら、使い終わる時にディスプレーを閉じ、使い始める時はディスプレーを開く、といった自然な感覚で使える。ほんのちょっとしたことだが、利用時の快適さにつながっている。
Windows XPに比べてVistaの評判が芳しくないのは、単により高いマシンパワーが必要である、ということよりも、「なんとなくキビキビ動かない……」という点に起因する部分が多いのではないだろうか。MacBookを通してMac OS Xに触れてみると、そういった「パソコンに求められる“性能”とはなにか」を、また別の目で見ることができるはずだ。
- オススメする人
- ・高級感があり、使いやすいノートパソコンを探している人
- ・Windowsに「どことなく不満」を感じている人
MacBook (MB467J/A)の主なスペック | |
---|---|
CPU | Core 2 Duo(2.40GHz) |
メモリー | DDR3-1066 2GB |
グラフィックス | GeForce 9400Mチップセット内蔵 |
ディスプレー | 13.3型ワイド 1280×800ドット |
HDD | 250GB |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチドライブ |
無線通信機能 | AirMac Extreme Wi-Fi(IEEE 802.11a/b/g/n準拠)、Bluetooth 2.1+EDR |
インターフェース | USB 2.0×2、Mini DisplayPort、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅325×奥行き227×高さ24.1mm |
重量 | 約2.04kg |
バッテリー駆動時間 | 約5時間(独自計測) |
OS | Mac OS X Leopard |
価格 | 18万4800円(アップルストア価格) |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。
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