100円のNetbook登場
競争の激化するNetbook(安価なミニノートパソコン)の市場では、すでに100円の製品が登場している。デルやASUSの製品だ。もちろん同時にイー・モバイルに加入して通信料金を毎月払わなければならないので、携帯電話の「1円端末」みたいなものだが、ちょっと前まで通信をバンドルしても1万円台前半だった。
こうした動きに火をつけたのは、今年初めに台湾のASUSが5万円以下で発売した「Eee PC 4G-X」だ。当初は安いだけが取り柄の隙間商品とみられたが、その後エイサー、HPなどの海外メーカーが参入し、遅れて東芝やNECなど国内メーカーも参入した。今ではNetbookが台数ベースでは市場の約25%を占める(BCN調べ)。
グローバルな規模の経済が勝負
日本のパソコン市場は、長くNEC・富士通・東芝などの国産メーカーが市場の半分を占める寡占体制が続いてきたが、最近はデルが第3位に食い込んできた。ノートパソコンだけをみると、9月の販売台数シェアでは日本エイサーが約14%のシェアを獲得し、上位5社に入った。Netbookに限ると日本エイサーのシェアは50%を超え、2位がASUSの32%と、台湾の2社で80%を超えている(BCN調べ)。
エイサーは世界市場でHP、デルに続く第3位のメーカーとして以前から知られているが、ASUSは昨年まで名前も知られていなかった。しかし実は、同社は世界のマザーボード市場ではトップメーカーで、2005年には5200万枚のマザーボードを出荷した。これは世界で販売されたデスクトップ パソコンの3台に1台に相当する(ASUS社のサイトより)。これに比べれば、国内トップのNECでもグローバルな販売台数は約300万台にすぎない。
半導体産業は固定費が大きく、国際競争によって価格が極限まで下がっているため、設備稼働率90%が採算分岐点だといわれる。ASUSなどの生産専業メーカーは、標準的な部品を大量に生産して世界に出荷することによってコストを下げている。固定費が同じなら、生産台数が多ければ多いほど単価が安くなるのは、経済学でよく知られている規模の経済だから、台数が1桁違う日本メーカーと台湾メーカーでは、とても競争にならない。

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