これまでにない取り組み
西口本部長は、1月10日の発表以降、ひとつの言葉を社内に発信してきた。
「チェンジ パナソニック」
この言葉には、すべてのやり方を変えていこうという意味が込められている。
西口本部長は、「機能、デザイン、先進性、洗練性、そしてマーケティングといったあらゆる部分で進化を図れるチャンス。まさにフェーズチェンジの時期でもある。この変化が、これからのパナソニックの武器になるはずだ」と語る。
「チェンジ パナソニック」には、すべての部署、すべての個人が変化し、自発的に変化していくことを示したものといえる。創業者の言葉に当てはめれば、「日に新た」ということになるのだろうか。
その具体的な意識づけとして、今年1月以降、同マーケティング本部の社員は、これまでやったことがないことを、1人3つ以上、提案することが義務づけられた。
社員は、視点を変え、思考を変え、自らの立ち位置を変えながら、提案を寄せた。
それは早くも、年末商戦の施策に、「これまでにない取り組み」として反映されている。
例えば、デジタル一眼レフカメラの「LUMIX G1」は、50歳代の女性を主要ターゲットとし、これまでの一眼レフカメラの常識だった「重い」、「大きい」、「難しい」というイメージの一新に取り組んでいる。
女性のデジタル一眼レフカメラの購入は約3割にまで増加しているものの、使いこなせていないという女性が4割を占めているのが実状。マイクロフォーサーズ規格を採用したことで小型、軽量という技術的進化を遂げたことで、重い、大きい、難しいというデジタル一眼レフカメラの「常識」を、「非常識」にするというのが、マーケティングメッセージだ。
「既存のデジタル一眼レフカメラと戦うのではなく、従来の殻から抜けだし、新しいところに一歩踏み出して、市場を形成するのがG1。そのためのマーケティング施策を展開していく」というわけだ。
また、デジタルビデオカメラの“愛情サイズ”では、春は入学式、秋は運動会に集中していた訴求を、「ママになったら、ムービーをはじめよう」、「孫ができたら、ムービーをはじめよう」として、妊婦、孫という視点からの訴求へと変えた。
「ここ数年は、秋といえば運動会、春といえば入学式という考え方しかなかった。それでは、いつまでたっても、市場は拡大しない。利用シーンを突き詰めていった結果、ママになったら、あるいは孫ができたら、という訴求が生まれた。パナソニックがこうした角度から訴求するは初めてのこと」
このように、視点を変えることで、これまでとは異なるターゲットを意識したマーケティングが始まっているのである。
「社名変更前の9月30日までの期間は、アイデアを出す準備期間。そして、これからは実践フェーズへと入っていく。マーケティングだけでなく、商品にも踏み込んだ変化が、今後は顕在化してくることになるだろう」と、西口本部長は、将来の商品の変化についても示唆する。
VIERAでは、Neo-PDPと呼ばれる次世代プラズマパネルが、いよいよ来年春から投入される。また、10月に開催されたCEATECで見せたようなネオ・ビエラリンクの提案や、「空間まるごと 一歩先のくらし」で見せたコンセプトの実現なども期待される。
ネオ・ビエラリンクは、VIERAを中心に、AV機器、生活家電、健康・美容機器、設備機器といった様々な機器がつながり、くらしを豊かにするという提案。ここで示したのは、わずか3~5年後のくらしの形であり、現実性の高いものばかりだ。
「従来ならば、展示会で将来のコンセプトを展示し、手のうちを明かしていいのかという議論も社内にはあった。だが、そうした議論が無くなってきている」と西口本部長は語る。
ここにも社名変更を機に、社員の意識が大きく変わった成果が出ているのかもしれない。
チェンジ パナソニックの成果は、これからどんな形で表れるのだろうか。
「来年春に第一段ロケットともいえる商品を示すことができるだろう。そして、次の春には第2段ロケットに点火する。そのときに、パナソニックの商品は、ガラッと変わったということを体感してもらえるはず」
社名変更、ブランド統一は、元祖パナソニックブランドといえるAVC商品にも大きな変化をもたらしているのは確かであり、その成果はこれからベールを脱ぐことになる。
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