現在、多くのSaaSはPCでの利用を前提にしているが、昨今ではケータイもクライアント端末として検討しなければならない。また、iPhone 3Gの発売を機に、スマートフォンでの需要も見えだした。今回はSaaSとケータイの関係を見ていきたい。
はしりはグループウェア ケータイとWebアプリの関係とは?
1990年代後半、ケータイがWebブラウザを搭載し、インターネットと接続できるようになった。こうした背景から、iモードなどのケータイ用ページを生成できるグループウェアが登場し、PCではなく、ケータイからWebグループウェアを使えるようになった。確かにスケジュールやアドレスなど、部内で共有しているアプリケーションは、ケータイから使えると利便性は増す。
とはいえ、当時はデータ通信速度が9600bps~64kbps程度と低速で、もちろん、定額制のサービスもなかった。また、グループウェアのサーバ自体が社内に存在していたため、ケータイから利用可能なリモートアクセス環境を構築しなければならないのも高いハードルであった。当時は、SSLでリモートアクセスできるVPNゲートウェイもなかったため、どうしても外から利用したいという場合は、インターネットにサーバを公開して、ユーザー認証を介して利用するか、PHSでリモートアクセス可能な環境を構築するしかなかった。そのため、ケータイからのWebアプリケーションの利用は難しいと言わざるをえなかったのが正直なところだ。
しかし、3Gケータイの登場でデータ通信速度が向上し、定額制がスタート。画面の解像度がアップし、端末の処理能力が底上げされてきた昨今、ケータイは有力な「業務用クライアント」として浮上してきた。これには漏えい対策として有効なシンクライアントの端末として、ケータイを利用しようという考え方も背景にある。さらに、昨今ではスマートフォンやiPhoneのような、PCライクなOSと無線LANを搭載した端末が登場し、業務で活かそうという試みが始まったところだ。
先日は、コンサルティング会社のベリングポイントが、約1000台のiPhone 3Gを業務用端末として導入することを発表している。
こうした業務利用で注目されるのが、SaaSのケータイ、スマートフォン、iPhone対応である。特にiPhoneへの対応は、セールスフォース・ドットコム、グーグル、オラクルなどのSaaSベンダーが積極的に進めており、iPhone用の「App Store」などで公開している。現在、日本の多くのSaaSベンダーがこうしたモバイル端末への対応を続々発表しているが、その実態と未来はどうなのだろうか?
モバイル端末対応を進めるフィードパス
こうしたモバイル端末対応の例として、今回はフィードパスの例を紹介しよう。メールシステム「feedpath Zebra」を展開するフィードパスは「feedpathZebra de Mobile」というプロジェクトで、モバイル端末対応を進めている。
9月17日に発表されたfeedpathZebra de Mobileの第一弾は、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの既存のケータイへの対応だ。これはfeedpath Zebraの売りであるWebメール機能を、ケータイで使えるようにしたもの。feedpath Zebraは「Zimbra」という米国ジンブラ(現ヤフーの子会社)のメールシステムであるため、日本のケータイ対応はフィードパス自身が行なったという。情報漏えいを避けるため、添付ファイルはあえてダウンロードできないようにしている。
そして、第2弾は今までのメールシステムにグループウェア的な機能を盛り込んだ最新版「Zimbra CollaborationSuite(ZCS)」でサポートされている2つのモバイル端末対応だ。1つ目はiZimbraと呼ばれるWebブラウザを用いた方法で、iPhoneのSafari 上の表示を最適化するもの。2つ目は「Zimbra Mobile for iPhone 2.0」をインストールしたiPhoneと、アップルの「MobileMe」を連携させる方法。プッシュ型でメールやカレンダーを配信するMobileMeの特徴を活かし、Webサービスとローカルのメールがリアルタイムにシンクロするようになっている。
日本でのiPhone への対応は年内を予定しており、その後BlackBerryなどへの対応も計画中とのこと。今後は幅広い端末で利用できることになりそう。現在、サイボウズOfficeとの連携や部門導入を安価に行なえるfeedpathZebraの導入キャンペーンを展開しているとのことだ。
今後、こうしたモバイル端末とSaaSの親和性が高くなれば、ケータイはますますモバイルシンクライアント化していくに違いない。今風にいえばクラウド上にメールや業務データを置き、それを手元の端末から扱うというわけだ。あとはヘビーに使うユーザーの使い方に合わせ、モバイル端末側のバッテリがどこまでもつかという話になるだろう。