Nehalemの性能向上の「原資」
もっとも、ユーザーが実際に使う上で重要なのは、アーキテクチャがどうかではなく「実際にどれくらい性能が上がるか」である。その点では、Nehalemは期待できる面が多い。
筆頭は、ついにメモリコントローラを内蔵させたこと。しかも、DDR3対応で、チャンネル数は3である。チップセット経由ではなく、CPUが直接メモリにアクセスできると、実際にCPUコアにデータが渡るまでの遅延時間を大幅に削減できる。AMDは2003年のAthlon 64でこの機構を採用したことで性能を底上げしてきたが、Nehalemではこれを追撃し、チャネル数、対応メモリの速度で優位に立った。
Core i7が対応するのはDDR3-8500(1066MHz動作)であるため、3チャンネルだとメモリ性能はピーク値で25.5GB/秒に達する。Core 2でも、FSBが1600MHzのX48チップセットを用い、DDR3-12800を使えばピーク性能は同じになるが、それでもCore i7のほうが遅延が少ない分有利だ。一般的なDDR2-800ベースのCore 2 Duoマシンでは12.8GB/秒であり、Core i7は2倍の性能になる。
もうひとつは、1つのシリコンダイ上に4つのコアが搭載されることだ(AMDの言うネイティブクアッドコア)。これまでのインテルのクアッドコアCPU、Core 2 Quadシリーズは、デュアルコアのシリコンをパッケージ内に2つ封入することで実現してきた。つまり、見た目は1つのCPUだが実際にはデュアルCPUであり、それぞれのCPUはあくまでデュアルコアであった。その点Nehalem(のうち、今回登場したデスクトップ用のCore i7)は、4つのコアが1つのシリコン上にある文句なしのクアッドコアだ。また、それらすべてが共用可能な8MBという巨大3次キャッシュメモリも搭載している(Core 2 Quadでは、同じダイ上の2つのコアの間でしかキャッシュを共有できなかった)。これは、負荷に応じたコアごとのキャッシュ量の割り当てをよりフレキシブルに行えるようになるほか、3つ以上のスレッドが協調して動作するようなアプリケーションにおいて、より高速なデータ共有が可能になると考えられる。
Core 2シリーズとCore i7のコアおよびキャッシュの違い | |||||
---|---|---|---|---|---|
CPU | コア数 | 論理コア数 | 1次キャッシュ | 2次キャッシュ | 3次キャッシュ |
Core 2 Duo | 2 | 2 | 各64KB | 4MB | - |
Core 2 Quad (65nm) | 2 + 2 | 4 | 各64KB | 4MB + 4MB | - |
Core 2 Quad (45nm) | 2 + 2 | 4 | 各64KB | 6MB + 6MB | - |
Core i7 | 4 | 8 | 各64KB | 各256KB | 8MB |
※“各”は各コアごとに装備していることを示す。キャッシュサイズは上位モデルの数値。下位モデルでは少ない場合がある。
このほか、Core i7では、1つのコアが2つのスレッドを同時に実行できるハイパースレッディング機能を再び搭載した。ハイパースレッディングはPentium 4時代に一度搭載されたが、テストによってはHTをオフにしたほうが高速になるようなケースがあったりもしたためか、Core 2では採用されなかったが、それが復活したことになる。本物のコアが1つしかないとHTによる性能低下が起こりうるが、4つあれば不都合は起きにくく、むしろメリットのほうが大きいという判断だろう。
これにより、物理的には4コアだが、OSからは8コアと認識され、8つのスレッドを同時に動かせる。多数のスレッドを並列に動かして高速化を図るアプリケーション(エンコーダやCGソフトなど)では、さらなる性能の底上げが得られるだろう。
こうしたことを考えると、Nehalemは、特に同一クロックのCore 2 Quadと比べかなりの性能向上が期待できる。以下、シングルスレッドのアプリから順に性能を見ていきたい。
(次ページへ続く)
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