パフォーマンスは向上!
マザーボードやメモリーは総取り替え
Q4 性能は上がってるの?
A4 テストにもよるが、同クロックのCore 2 Duo/Quadよりも速い。インテルでは、Core i7-965 Extremeと最速のCore 2 Quad Extremeを比較して、40%も高速としている。
まず前述のように、Core i7はメモリーコントローラーを内蔵したことにより、メモリーアクセス全般に関わる性能が向上する。キャッシュメモリー全体の容量も増えているので、これによる上乗せも期待できる。
4つのCPUコアに加えて、HTにより8スレッド同時実行が可能になっているので、マルチスレッド化によりパフォーマンスが向上しやすく作られたアプリケーション(例えばビデオエンコード)では、さらに性能向上が期待できる。ただし、シングル~少数スレッドのアプリケーションでは、HTの効果はあまり期待できない。
アーキテクチャー面では、「ターボ・ブースト・テクノロジー」(以下ターボ・ブースト)による性能向上も期待できる。45nmプロセス版のCore 2 Duo/Quadにも、「Enhanced Dynamic Acceleration Technology」(以下EDST)と呼ばれる自動オーバークロック機能が内蔵されていた。ターボ・ブーストはそれをさらに強化したものだ。
ターボ・ブーストはCPU自身による自動オーバークロック機能とも言える機能だ。例えば、4つのCPUコアそれぞれの処理負荷が低い場合、CPUコアのうち2つを停止。残る2つのコアをオーバークロックで動作させることで、処理能力を向上させる。3つを止めて、残るひとつをさらにオーバークロックしたり、4つ全部を少しオーバークロックするといった柔軟な高速化も可能となっている。
一般的なCPUのオーバークロックは、消費電力と発熱量の増大と引き替えに、すべてのCPUコアの動作周波数を引き上げるものだが、ターボ・ブーストはあくまで「TDPの枠内で行なう」点に特徴がある。低負荷のCPUコアを停止させた余力の枠内で行なうので、TDPの枠を超えた冷却機構を備えたりする必要がない。ちなみに、ターボ・ブーストでのオーバークロック幅に個体差はなく、上昇限度は決めうちされている。
また、Core 2 Duo/QuadのEDSTは、負荷の低いCPUコアがアイドル状態(C3ステイト)に入った時にだけ、1段階分のオーバークロックが可能であった。それに対してCore i7のターボ・ブーストでは、各コアの負荷が低い状態でも動作するし、オーバークロックの段階も複数になるなど、柔軟な高速が可能になっている。
そのほかにも、特定の命令を組み合わせてひとつの内部命令(μOps)に変換することで、処理性能を向上させる「マクロフュージョン」が、64bit命令でも機能するように改良された。Core i7搭載マシンでは、メモリーチャンネルのトリプルチャンネル化に合わせて、6GBのメモリーとWindows Vistaの64bit版を搭載する例が多い。64bit命令の高速処理は、地味だが効果を発揮しそうだ。
なお、ベンチマークテストによる性能比較については、こちらの記事も参照していただきたい。
Q5 今までのマザーボードやメモリーは使えるの?
A5 使えない。現在のCore i7は「LGA1366ソケット」と呼ぶ新しいCPUソケットにのみ対応しているので、既存のCore 2 Duo/Quad用マザーボードには装着できない。またCPUパッケージ自体のサイズも大きくなっているので、既存のLGA775用CPUクーラーは、そのままでは装着できない。LGA1366に対応するリテンション(固定金具)があれば可能である。
メモリーもDDR3-1066対応となっているので、既存のDDR2メモリーなどは使えない。また、Core i7はメモリーチャンネルがトリプルチャンネル構成になっている。そのため、メモリーモジュールは3枚単位での装着が基本となる。デュアルチャンネル対応で2枚単位の接続だったCore 2 Duo/Quadとは、ここも異なる点だ。
Core i7搭載パソコンを自作する場合は、CPU、マザーボード、メモリーを総取り替えする必要がある点を覚えておきたい。なお、グラフィックスカードなどは問題なく使える。電源ユニットについては、電源ユニット自体の仕様やマザーボードに依る。
Q6 どんなチップセット/マザーボードなら使えるの?
A6 対応するチップセットは現在、「Intel X58 Express」のみ。
X58はハイエンドマザーボード向けのチップセットで、36レーン分のPCI Express 2.0インターフェースを備える。これにより、NVIDIA SLIやATI CrossFireなどのグラフィックスカード2枚差しを可能としている。I/OコントローラーのICH10は、すでにIntel 4シリーズチップセットで採用されているものと同じだ。
ハイエンド製品向けに位置づけられているだけに、発売または発表されているX58採用マザーボードもおしなべて高価。3万円台後半から4万円台後半の製品が主体である。
X58採用マザーボードは、ASUSTeK、MSI、Gigabyte、Foxconnなどが製品を発表している。特にASUSTeKは、一挙に5製品を発表している。