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つなげ!オンガク配電盤 第7回

開発者が語る「KORG DS-10」の秘技

2008年12月05日 15時00分更新

文● 四本淑三(powered by 武蔵野電波)

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ノウハウを伝授──(C)金森氏のスゴ技4本


 というわけで金森さんのサウンドメイキング講座、スタート!

 今回は金森さんが実際に音を作っている過程を動画に押さえ、それを編集して紹介している(それに合わせて不肖・四本の解説も参考にしてもらえれば幸いです)。具体的な各ツマミのパラメーター設定の要所は、DSの液晶画面を用意してあるので、それを参照してほしい。なおLesson 1からLesson 4まで、すべてドラムトラックを使う。



Lesson 1「和音を鳴らす!」


 DS-10は単音しか出せない「モノフォニックシンセサイザー」なので、本当は和音を弾くようにはできていない。しかし、2VCO構成のシンセが2つ入っているので、合計4音を同時に鳴らせる。それぞれのピッチを調整してシーケンスを組めば和音が実現できるわけだ。

 さらに4つあるドラムトラックも、それぞれが2VCO構成なので、素直にやっても合計12の和音が鳴らせる。

今回の4つの技はいずれも、ドラムトラックを利用する

 だが和音ばかりを鳴らしていると、すぐにDS-10の音源を使い切ってしまう。ドラムやベースを使ったアンサンブルも組みにくい。そこで、限りあるDS-10の資源を有効利用すべく、ドラムトラック1つだけで4つの和音を成立させる。それがこのワザだ。

 では金森さんの解説と実演をどうぞ。

 まずVCO2のチューニングをVCO1に対して完全5度に調整する。完全5度とは「ド」と「ソ」の関係。VCO2 PITCHのつまみを調整して、VCO1の「ド」に対して、VCO2の「ソ」の音が重なるようにする。

[DRUM EDIT]画面。[VCO2PITCH]のツマミの位置に注目。これが完全5度のポジション。VCO1も同時に鳴るよう[BALANCE]はセンターに

 この完全5度の「ドソ」に、LFOの矩形波を使ってビブラートをかける。矩形波なのでスイッチングするように音程がカクカクと動く。この振れ幅の調整で、聴こえる和音が違ってくる。例えば長3度の幅で動かせば「ドソ」と「ミシ」の音が連続して入れ替わることになる。

 その状態で徐々にLFOのスピードを上げていくと、人間の耳には「ドソ」「ミシ」の和音のように聴こえてくる。ドミソシと言えばメジャー7thの構成音だ。これが2VCOで4声の和音を成立させるワザだ。

[DRUM EDIT PATCH]画面。[MG WAVE OUT]の矩形波を[PITCH IN]に接続。PITCH INのツマミで振れ幅を調整。このポジションが長3度の位置。MGの[FREQ]ツマミでビブラートの速さを決める。速過ぎても遅すぎても和音らしく聴こえないので慎重にチューニングを

 仕上げにコーラスをかける。和音に聴こえると言っても、音程を小刻みに上下させているだけ。時間軸で切ると4音一緒に鳴っている箇所はないので、音の段差が分かってしまう。その段差を埋めるのがコーラスだ。

[DRUM FX]の[CHORUS]画面。DRY/WETはセンター。DEPTHは右目いっぱい。LFO FERQは速くても遅くてもダメで、このポジションがベスト

 コーラスはごく短いディレイ成分を付加し、音程を揺らすことで成り立つ効果。音程をぼかすと同時に、原音が「ドソ」のとき、ディレイ成分が「ミシ」なら、それらが重なった部分は、時間軸で切っても「ドソミシ」の4声が同時に鳴っていように聴こえる。

 実はこのワザ、通常のシンセパートでもできる。ただしその場合は、和音を作るパートにコーラスをあてる必要がある。でもドラムトラックで和音を作れば、シンセパートのFXは何をどう使ってもいい。それがドラムトラックで和音を作るメリットだ。

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