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GPUでパーソナルなスパコンを実現! NVIDIAがTeslaで狙うモノ

2008年11月19日 16時41分更新

文● 小西利明/トレンド編集部

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 米NVIDIA社は18日(現地時間)、非常に興味深い製品の発表を行なった。それは「Tesla パーソナル・スーパーコンピュータ」。空調と専用電源を確保した大きな部屋に鎮座するといったイメージのある「スーパーコンピューター」(以下スパコン)に、「パーソナル」という言葉ほど似合わなさそうなものはないように思える。NVIDIAが何を実現したのかを見ていこう。



Tesla C1060×4で4TFlopsを実現!?

 Tesla パーソナル・スーパーコンピュータとは、7月にNVIDIAが発表した汎用演算ユニット「Tesla C1060 GPU コンピューティング・プロセッサ」を、ひとつの筐体上に複数搭載して実現するワークステーションだ。NVIDIAはパートナー企業にTesla C1060やリファレンスデザインなどを提供し、パートナー企業はそれを元に自社の製品を構築して、ユーザーに販売する。

Tesla C1060 コンピューティングプロセッサ

Tesla C1060 コンピューティングプロセッサ

 関連記事にもあるとおり、Tesla C1060はパソコン用のGPU「GeForce GTX 200」シリーズをベースにした汎用演算プロセッサー「Tesla T10」を搭載する、高速科学技術演算に特化した演算ボードである。これを複数台か、Tesla C1060複数とQuadro FX搭載グラフィックスカードを搭載して販売されるシステムを、Tesla パーソナル・スーパーコンピュータと称している(制御用に別途x86 CPUを積む。OSはLinux/Windowsなど)。

サードウェーブ「FRACTICA」

サードウェーブが発売予定のTesla パーソナル・スーパーコンピュータ「FRACTICA」。Tesla C1060×3とQuadro FXを搭載

Tesla C1060 3台の拡大

Tesla C1060 3台の拡大。その下はQuadro。電源は1200Wと大容量だが、一般的な110Vコンセントからの給電で十分に動作する

 TeslaプロセッサーやGeForce 8/9/GTX 200は、いずれもGPUを汎用演算に使う技術「NVIDIA CUDA」(Compute Unified Device Architecture)に対応している。CUDA環境向けのソフトウェアの開発は、無償提供された開発環境を用いて、C言語ベースでのプログラミングが可能となっている。

 1チップで240コアを持つTesla T10は、1基で約1TFlopsの演算能力を持つ。よってTesla C1060を4枚搭載したシステムでは、なんと4TFlopsもの演算能力を持つことになる。NVIDIAでは、既存のデスクトップの250倍ものパフォーマンスがあるとしている。

Tesla パーソナル・スーパーコンピュータとほかのシステムとの比較

Tesla パーソナル・スーパーコンピュータとほかのシステムとの比較。一般的なワークステーションの250倍速く、スパコンの100倍、費用対効果に優れるとしている

 調べてみると、2007年に国立環境研究所に納入されたスパコンが、ちょうど約4TFlopsとのこと。誇張無しに、Tesla パーソナル・スーパーコンピュータはスパコン並みの性能を有するわけだ。それがフルタワークラスの筐体に収まり、100万円前後で提供されるのだから、そのインパクトは非常に大きい。

Teslaソリューションの応用事例

Teslaソリューションの応用事例と、性能向上の割合を示したスライド

 物理シミュレーションや遺伝子の解析、天体の動き、さらには金融シミュレーションから映画品質の3Dグラフィックスの生成まで、高速なコンピューターを必要とする用途は枚挙にいとまがない。これらの用途では、コンピューターは速ければ速いほどよいが、だからといって巨大でコストのかかるスパコンをおいそれと導入できない。またスパコンがあったとしても、技術者個人が占有して使うわけにもいかない。NVIDIAがTesla パーソナル・スーパーコンピュータで狙うのは、そうした高速なコンピューターを真に必要としている、技術者1人1人だ。

 システム自体が安価なだけでなく、周辺の環境も含めてTesla パーソナル・スーパーコンピュータは導入の敷居を下げている。製品は大きめのフルタワー型筐体でパッケージングされ、一般的なコンセントからの給電で動作し、特別な空調システムや電源は必要としない構成になっている。(株)サードウェーブが製品化を予定しているシステムの場合、電源は1200級(パソコン用ではないオリジナルとのこと)で、動作音も45dB以下程度。ビジネスユーザーや大学の研究室なら、机の横に置いて使うにも困らない程度となっている。

 ソフトウェア開発者に向けたCUDAのアピールも精力的に行なわれているおかげで、対応するソフトウェアや導入事例は日々増加している。数式処理プログラムとして名高い「Mathematica」も、CUDAに対応しているとのことだ。低価格で導入しやすいシステムで構成されたTesla パーソナル・スーパーコンピュータは、非常に魅力的な製品となるだろう。

 だが、NVIDIAが狙うのはデスクサイドのパーソナルスパコンだけではない。

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