女子の活躍が目立つデジタルコンテンツ部門
大会2日目のデジタルコンテンツ部門では、ウェブブラウザで閲覧可能な作品(動画、静止画、写真及び音楽など)が応募資格となる。今年のテーマは「扉を開けたら……」である。予選審査で選抜された10チームが本選に参加。午前中から3時間を掛けて、審査員を前に自分たちの作品を紹介しながらプレゼンテーションする形式だ。
イラスト、写真、音楽を様々な発想や手法で組み合わせて作られた映像作品が並んだ。そのテクニックや表現力は、高校生がここまでやれちゃうの? という印象。審査終了後に、審査員として参加したアスキー総合研究所 所長の遠藤 諭に感想を尋ねると「去年までの作品と比較して、大幅にレベルアップしてきている。もしかすると、ここ最近のYouTubeやニコ動などからの影響も大きいのでは?」と話していた。
また、10チーム中5チームが女子ペアのチームだったことも興味深かった。デジタルコンテンツ部門は、アートな要素や表現力・発想力を、ウェブ上のコンテンツとしてどう作りあげていくかが問われる。一昔前に比べてパソコンやツールが扱いやすくなってきたこともあり、「絵が好き」「デザインが好き」といった取り掛かりから、誰もが参加できる時代なのだろう。情報技術系コンテストが「理数系の男子のもの」といったイメージを一掃したほうがよさそうだ。
悔しいという気持ちを大事にして欲しいと松本零士氏
デジタルコンテンツ部門を制覇した沖縄工業高等専門学校は、昨年に続き2連覇。昨年もグランプリを受賞した渡嘉敷拓馬くんが、今年は、音楽編集の腕前を見込んだ石橋祐紀くんに声を掛けてチームを組んだそうだ。
作品「かえりみち」は、生死の境をさまよう主人公が、いくつもの扉のある世界へ迷い込むといった体験をCGと効果音などを駆使して表現したもの。もともとは自動車のエンジニアリングが専門の石橋くんは、大の音楽好きだそうだ。
学校では、ダンス部の音楽編集などを手掛けている。「今回のような作品制作はまったく初めて。挿入したサウンドは、アリモノではなくすべて手作りの音源を使った。例えば足音は、自分の足で音を立ててそれを録音したもの。本当に細かく丁寧に作り上げたので、大変だったけれど評価してもらえてうれしい」とコメントしてくれた。一方の渡嘉敷くんも「2Dのイラストを、すべて手書きで一枚一枚描いてスキャナで取り込んでいく作業では、時間が莫大に掛かり大変だった」と、夏休み返上で制作に取り組んだ様子を語ってくれた。
審査員総評では、松本氏が「褒めてくれる友人がいて、競い合えるライバルがいることがその分野で伸びていくためには重要なこと。悔しいという気持ちを大事にして欲しい」と述べた。他の審査委員たちからは、「両部門ともレベルがかなり高くなってきている」ことと、「受賞作か否かは接戦であった」ことなどが総じて語られていた。