───想いの強いキャラクターは紫になりますか?
【松尾監督】 紫と真九郎になりますね。この2人を軸に話を作っていったので。ただ、ドラマCDのようにこうやって楽しそうにしようとしたときに、真九郎のバックグラウンドっていちばんジャマくさいんです(笑)
そうすると真九郎って僕の中ではドラマCDの中で重要度は減るというか……。この暴走する中で一人、自分なりの倫理観を持って止めるやつっていう役割でしかなくなっちゃうんです。こういうおもしろおかしな話をするときにいちばん僕の中で扱いやすいのは、実はこの2人以外です。紅香、弥生、環、闇絵。このメンバーが僕の中でいちばん動きやすい、動かしやすい。
テレビのときはその逆でやらなきゃいけなかった。この2人が軸になってて、周りがどうやってからめるかっていう話でしたけど、今回は周りの連中が何かやってるところでこの2人がどういう動きをしてるかっていう考え方のほうが、巻き込まれ方としてはおもしろいんじゃないかと。
───今回のドラマCDは、紅香もそうですけど、蓮丈さんとか、本編ではかなりシリアスなキャラクターがギャグシーンを披露していたと思うのですが……
【松尾監督】 蓮丈はどうしても出したくて。それは個人的に黒田さんの作品に対する貢献度がそうとう高いと思っていたので、こうやって再びみんなで集まる機会があるのであればぜひともお願いしたいというところもあって、なんとか出番を作りたいって想いから発展してます。そういう意味ではスムーズな出番の設定ではないんだけど、それはサービスだと思ってごめんなさいねということはあるんですけど。
紅香に関しては、僕はもう少し実は明るい人だっていう感覚があって、ユーモアもある人だと思っているから、扱い方っていくらでもあるなって思っていたのです。ただ、使えない部下を持った上司の憂鬱みたいなものを出しておきたかったので、もうちょっとうまくやりたいなぁと……。実は紅香のモデルって僕なんです。ああいうグチを僕はよく言うんです。「なんで僕が怒ってるかわかる? わかる?」みたいなね。「いつまでもあると思うな堪忍袋の緒」っていうのも僕のセリフで、「このサンダルはお前をなぐる武器だ」ってよく言うんです(笑)
───「紅」の印象深い“あのDVDのCM”は監督がご提案されたんですか?
【松尾監督】 違いますよ(笑)
これは明快に言わせていただきますが僕の考えではありません。あれは販売会社から企画がきまして、それがどういうわけか製作委員会のほうでもOKが出たと。まあいいんじゃないですかと。
最初の頃からテレビの本編をつないだ当たり前なものを作るのはやめようと言っていたのです。どうせDVDが出ることはみんな知ってるよと。それこそホームページとかインターネットとか見て情報を得ることはいくらでもできるんだし、CMをみて「おっDVD出るんだ」じゃないでしょ、「あぁ当然出るのね」、「いつ出るの?」っていう程度でしょ。だったらもう少し記憶に残るものをやりましょうと。あるいはまったく違っててもいいから、知らない人が「『紅』のDVDのCM、なんかおかしいらしいぜ」って言ってくれるだけでも十分だと思って。
CMの役割としてそのほうが正しいだろうと。だからそれが悪ふざけだって言われたら、言われただけ僕は得だと思ったの。そういう挑戦的な物をやるっていうのであればぜひともご協力させていただきたいと思っただけです。
実は前の作品のときもふざけたCMだったんだけど、あの作品のときも僕がやるって言ったのはそういう内容だったので、だったらやらせてくれと言ったんです。なるべくそういうことをやってくれたほうが僕的にはうれしいんですよね。
(次ページへ続く)
(C) 片山憲太郎・山本ヤマト/集英社・「紅」製作委員会