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特集・冬ボーナスで買う薄型テレビ 最終回

ソニーの薄型テレビ「LEDバックライト」最強説を検証する

2008年11月13日 12時00分更新

文● 鳥居一豊

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プラズマ特有のノイズも克服、LEDバックライト最強説が浮上

 これでひととおり「黒」の秘密はわかった。次に気になってしまうのは暗部の階調、グラデーションだ。従来はバックライトの光漏れに暗部の信号が埋もれないように、暗い信号を強調する必要があったため、暗部のノイズも目立ちやすくなっていたのだ。

こちらも究極的に美しい、パイオニアのプラズマテレビ「KURO KRP600A」。こうなると美しさに差が出るのは階調表現の違いくらいだ

 結論から言えば、こちらも不満はない。LEDバックライトなら光漏れの問題はかなり改善されているため、信号を強調する必要がなくなり、結果としてノイズ感のない暗部の再現ができるというのだ。

 黒(暗部)再現に優れるプラズマテレビだが、実は暗部再現で特有のノイズ感が気になるという弱点があった。これは、プラズマが光の点滅回数を調整することで明暗をあらわしているためだ。

 LEDバックライトには、原理的にそうしたノイズがない。そのため階調がスムーズで清潔感がある。もちろん正確な階調の再現や、画素単位での明暗の描き分けという点ではまだプラズマが優位にある。だが、この滑らかな暗部階調は液晶ならではの優位性だろう。


実は映像のぼやけも少ないんです

 LEDバックライトの恩恵はこれだけでは終わらない。次は残像感の低減だ。

 液晶ディスプレイに残像感を感じる理由は、実は液晶パネルの応答速度だけでない。映像を連続的に変化させる「ホールド表示」にも原因があるのだ。

 たとえば、左右のイラストの違いを探すタイプのクイズ番組で、映像の切り替わりに必ず黒画面が表示されていることに気付いていただろうか。実はこれ、脳内にある映像をリセットするために必要な処理なのだ。

 映像を連続的に変化させてしまうと、どんな微細な違いでも瞬時に判別できてしまう。これは脳内に残った過去の映像と、今見ている映像を比較しているからだ。こうした視覚特性もあって、液晶では残像感を感じてしまうのである。

 それなら、連続した映像を作るコマの間に「黒」の画面を挿入しようという発想が「倍速(黒挿入)」と呼ばれる技術だ。たとえば毎秒60コマの映像を、60コマの映像信号と60コマの黒画面を交互に表示する擬似120コマにすれば残像感が解消できるというわけ。

写真は「BRAVIA W1」で採用した、毎秒240コマ表示が可能な「4倍速」モード。4倍速(左)と通常速度(右)の映像。ブレ方の違いでチラつきの差が分かるだろう

 だがそうすると、当然ながら画面の明るさも半減してしまう。そこで、明るさを損なわないように中間画像を作って補間する方式が倍速表示の主流になっているのだ。

 XR1でも、基本的には独自の映像補間により毎秒120コマの映像を再現する「モーションフロー120Hz」を採用している。ただし、LEDバックライトの部分制御による「バックライトブリンキング」技術がそれをさらに強力にサポートしている。

 これにより、映像のリセット効果も組み合わさり、動画の残像感はほとんど体感できないレベルにまで低減されている。これが「モーションフロー Pro」という原理だ。

 なお、部分的とはいえLEDの部分的な調光によって明るさがやや落ちるため、出荷時の設定ではモーションフロー Proはオフ状態になっている。設定ではスムーズ/標準/クリア/切が選べる。実際に効果を試して使い分けるといいだろう。

 (次のページ: LEDバックライトか有機ELか、それが問題だ)

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