「脳が認識しない光」を巧みに利用した開発美学
だが、これだけの説明では「黒の真骨頂」であるプラズマテレビを愛好する筆者は納得しない。というのもXR1が「暗室でも黒浮きをまったく感じさせない」という、とんでもない特性を持っているからだ。
これはもう黒浮きしないどころか、プラズマ並みの高コントラストと言っていい。このカラクリはどこにあるのか尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「人間の目(視覚野)の特性を利用している」というのだ。実は人間の目は明るい光のすぐそばに暗いものがある場合、暗部をとらえる感度が鈍ってしまうのである。
理科の実験を思い出してほしい。黒い紙にあけた小さな穴から太陽を覗きこむと、漏れる光の影響で、実際以上に大きな穴に感じたはずだ。
これと同じ原理で「LEDが光っている部分は実際の映像で光るべき部分よりも大きい」。そこでは光漏れによる黒浮きは発生する。だが、その周辺部分にはもっと明るく光っている部分があるため、目に入っていても「見えていない」というわけだ。
この黒さに一分の隙なし! 何をどう見たって黒いものは黒い
しかし、これは月夜のように明暗の差が大きい場合に有効な説明。サスペンスドラマなどでよくある、薄暗い部屋の中で人物のシルエットが浮かぶようなシーンは話が違う。黒浮きが感じられてしまうのではないか。
そう尋ねると「液晶テレビはバックライトの光とパネルでの調光がセットになって映像を作っているということを思い出してください」と井川氏は答える。
……思い出してもよくわからなかったので、説明してもらった。
当たり前だが、LEDの数はパネルの画素数と同じ数がそろっているわけではない。確かに「LEDが光った部分」では光漏れが生じる。ならその分だけ「液晶パネルの明るさを絞る」ことで解決するのだ。
このため、画面に映った映像を見る限りでは光漏れを感じることなく、適正な映像を見ることができるというわけ。「LEDバックライト+液晶パネル」の絶妙なコンビネーションが、圧倒的な高コントラストを実現しているのだ。
当然こうした映像信号処理は今までにはない画期的なもの。LEDの部分制御としては同社の初号機であるにも関わらず、実際に実機を借りて視聴したときも、処理による目立った違和感はほとんど感じられなかった。
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