クライアントの仮想化を実現する2つの技術
クライアントの仮想化がもたらすメリットに関する説明の後、より具体的に、プレゼンテーション(層)の仮想化とアプリケーションの仮想化に関する個別の説明があった。
プレゼンテーションの仮想化に用いられる「ターミナルサービス」は、NT 4.0 Serverの時代から提供してきたが、Windows Server 2008ではTS RemoteAppやTS Gatewayなどの新機能を盛り込み、大幅に機能強化したという。ターミナルサービスの基本的な考え方は、アプリケーション自体はサーバーにインストールしてサーバー上のOSで動かし、クライアントには画面だけを飛ばすというもの。セキュリティー的なメリットのほか、クライアント側が古い低スペックのマシンでもアプリケーションを問題なく利用できるというメリットがある。
アプリケーションの仮想化に用いられる「Application Virtualization(App-V)」は、Microsoft Desktop Optimization Pack for Software Assurance 2008 R2(通称MDOP:エムドップ)に含まれている。MDOPは、10月1日より提供開始されたデスクトップOS展開管理支援ツールだ。マイクロソフトボリュームライセンスプログラムで提供されるソフトウェアアシュアランス(SA)締結ユーザーが購入できるサブスクリプションライセンスとして提供している。アプリケーションを仮想化するメリットには、アプリケーションの競合を解消できる、アプリケーションの集中管理を実現できるといったものがある。
各説明が終わると、東條氏は「クライアントの仮想化は、以上のようなプレゼンテーションの仮想化とアプリケーションの仮想化2つの手法によって実現されます。クライアントの仮想化により、OSの移行サイクルとアプリケーションの移行サイクルを完全に独立させて投資できるようになるところが非常に大きいと考えています」と、あらためてメリットを協調する形で今回のセミナーを締めくくった。
XPからVista、そして7へ! 仮想化が役立つ
ところで、話は変わるが、Windows XPは来年4月にメインストリームのサポートが終了し、その後5年間、2014年4月まで、サポート延長フェーズとしてサービスを提供することをご存じだろうか? 東條氏によれば、一般ユーザーはサポート延長フェーズで考えるが、企業ユーザーはメインストリームで考えることが多いという。
マイクロソフトは、サポート延長フェーズではセキュリティーの部分にしかサービスを提供しない。つまり、万一OSで不具合が見つかったとしても、OS側では対応はしてくれないことになる。アプリケーション開発の観点で考えると、「アプリケーションサイドでOSの不具合を回避するような形で、トリッキーな設計をしていかなければならなくなる」(東條氏)わけだ。
「トリッキーな部分」は、Windows VistaやWindows 7に持っていったとしてもそのまま残ってしまう。OSの互換性という観点からいうと対応性が悪く、コストにはね返ることになる。そのため、企業ユーザーはメインストリームを中心に考えることになる。
では、ユーザーはどうしたらいいのか? というと、答えは「Vistaを導入していち早くアプリケーションを対応させること」だそうだ。マイクロソフトは、仮想化、とくにクライアントの仮想化の技術で、企業ユーザーのアプリケーション移行を支援していくことになる。つまり、「XPのメインストリームのサポート終了間近!」→「Vistaに急がなければ!」→「仮想化が役立ちますよ!」というわけだ。うーん、お見事と言うしかない。