強いメーカーには、強いブランドがある
そして、憧れのブランドを実現するための最大の要素とするのが、「強い商品」だという。
牛丸副社長は、「強いメーカーには、強いブランドがある。その強いブランドを支えるのが、強いサブブランドだ」と語る。
過去最高の売上高を更新するパナソニックには、薄型テレビのVIERA、DVDレコーダーのDIGA、デジカメのLUMIXなどの強いサブブランドが目白押しだ。そして、それらのサブブランドを構成するのは「強い商品」となる。
「仮に、弱い商品を、マーケティングで強く見せたり、広告でよく見せることはできても、それは一過性のものでしかない。結局は消費者を裏切ることになる。強い商品があって、強いマーケティングが実現し、憧れのブランドが成り立つ。だからこそ、パナソニックは、強い商品にこだわっていく」
強い商品にも定義がある。
「値打ちある尖った特徴を持つ商品」、「あっ、といっていただける感動の値頃感」、「目で見てわかる商品特徴」の3つを兼ね備えた商品が、牛丸副社長が示すパナソニックの強い商品の定義だ。
実は、牛丸副社長は、社内に対して、「ヒット商品は、親の仇だと思え!」と言い続けてきた。
なにやら物騒な言葉だが、これには大きな意味がある。
「一度ヒット商品が出てしまうと、それで安心してしまい、その延長線上でしか、物事を考えなくなる。進化が止まり、強い商品が創出できなくなってしまう。強い商品は、絶え間ない破壊と創造の繰り返しによって生まれるもの。一度ヒットした商品こそ、親の仇と思うぐらいに破壊し、そこから新たなものを創造していく。常に危機意識を持ち、強い商品を継続的に投入していくことが必要だ」。
さらに、牛丸副社長は、商品に対するあふれる想いと、強い情熱を持つことが、メーカーの社員である最低限の資質だと言い切る。
「私は、社員に対して、ひとりひとりが商品を語れるようになってほしいと言っている。メーカーの社員である限り、モノを好きであってほしいし、そのモノに対して熱く語れる社員であってほしい。商品を説明できるのは当たり前のこと。どこが強いか、どこが弱いかも説明できる。ここまでくるには、すべての考え方や捉え方を、商品を起点にしなければ不可能。そして、商品を起点に考えるということは、顧客の視点に立ってモノづくりを考えるのと同義語となる。私たちが、商品について語る相手はお客様。お客様に納得していただけない商品を作っていると、それが語れなくなってしまう」
商品を語るのは牛丸副社長や、マーケティング本部の社員だけではない。中村邦夫会長も、大坪文雄社長も、商品について語りだしたら止まらない。経営トップが商品を語り、社員が語るからこそ、強いブランドができあがるのだ。
大坪文雄社長は、「モノづくり立社」を標榜している。
そして、すべての社員の活動を、「商品」に結集させることを宣言している。
これは、別の言い方をすれば、「強い商品」と「強いマーケティング」による「強いブランド」づくりの実践ということになるのは間違いない。
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