iPodとの接続方法は3種類
現在iPodとデジタル接続できる機器は大きく分けて3種類。(1)AVアンプ、(2)CD/SACDプレーヤー、(3)トランスポート──だ。
このうち(3)は、iPodの専用端子から取り出したデータを、同軸/光デジタルの信号として出力するだけだ。したがって、別途DACを追加しなければならない。(1)と(2)はDACを本体に内蔵しているため、その必要はない。DAC(Digital to Analog Converter)はその名のとおり、デジタル信号をアナログに変換する機器。オーディオ用では、数千円から数百万円までさまざまな種類のものがある。
iPodを組み込んだシステムをシンプルにゼロから組みたいなら、(1)か(2)を選ぶのが簡単だ。ただし、これらの製品ではiPodからのデジタル信号をスルーして、他の機器に出力することはできない。その意味で音作りは完結している。将来的に別のDACを追加して、システムの強化を図るといった使い方は不可だ。
一方、(3)には音質を決定する上で重要な意味を持つDACを自分で選べるという利点があり、こだわりを持ったシステムにiPodを組み込みたいと考えている人には適している。その分だけシステムが大掛かりで割高になるが、そのあたりをどう考えるかは人によって差が出るだろう。
AVアンプとiPodをつなぐなら、パイオニア
それでは、実際の製品について見ていこう。まずはもっとも手軽に楽しめる、iPodとデジタル接続可能なAVアンプについて見ていく。この分野で積極的なメーカーはパイオニアだ。
パイオニアは昨年末に発売したAVアンプのフラッグシップ機「SC-LX90」(価格88万円)にiPod接続用のUSB端子を搭載した。その後対応機種は増え、現在ではローエンドの「VSX-518V」(価格5万8500円)からSC-LX90まで、ほぼ全ラインアップがiPodデジタル入力対応となっている。今秋発売になったばかりの準フラッグシップ機「SC-LX81」(33万5000円)と「SC-LX71」(24万5000円)も同様。この傾向はぜひ推し進めてほしい。
機能や操作方法は機種によって多少異なるが、ここでは比較的手を出しやすい価格帯(実売で10万円強)で、AVアンプとしての機能も充実した中堅機種「VSA-LX51」を取り上げる。音質面でも市場の評価が高い1台だ。
機能的には、ロスレスフォーマット(TrueHD、DTS-HD)、Deep Color、x.v.Colorなどに対応。Blu-ray時代に必要な要件を備えている。アナログ480i/pから1080pへのアップスケーラー、3次元音場補正機能(Advanced MCACC)、マルチチャンネル再生時に音のズレを補正するフェイズコントロール、圧縮音源の高域を補完するアドバンスド・サウンドレトリバーなど、同社ならではの機能も豊富に搭載する。
接続は非常にカンタン
iPodとの接続は非常に簡単で、本体前面のUSB端子にiPodをつなぎ、電源を投入。アンプのセレクターを「iPod USB」に合わせるだけだ。選曲操作も、リモコンの十字キーで「Playlist」「Artists」「Albums」などをたどっていけばいい。このメニューはテレビ画面だけでなく、フロントパネルディスプレーにも出るので、純粋なオーディオ機器として音だけを楽しみたい場合にも便利だ。
今回は機材の都合で試せなかったが、リモコンの「iPodCTRL」ボタンを押すと、iPod側で選曲できるようになるとマニュアルにある(第5世代iPodや第1世代のnanoは不可)。
なお、最上位のSC-LX90とは違い、本機は日本語の曲名やアーチスト名を表示できない(###で表示される)。選曲操作はその分だけしにくくなるが、よく聴く曲はアルファベットのプレイリストに収めるなど、工夫でカバーできるだろう。
若干気になったのは、再生中の曲を停止できないこと(一時停止はできる)。セレクターを別の場所(BDやDVD)からiPod USBに戻したり、外出先で使っていたiPodをつなぐと、自動的にレジューム再生が始まる。曲の途中からではなく、停止状態からスタートさせたい場合には若干戸惑う。