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iPod+デジタル接続で始める、ピュアオーディオ体験

2008年10月17日 15時34分更新

文● トレンド編集部

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アナログ接続との差は歴然、納得の音質


 肝心の音質についてはどうだろうか。第一世代の「iPod Classic」(160GB、Apple Lossless形式、EQはオフ)と手持ちのスピーカー(B&WのCM7)を組み合わせて、さまざまなジャンルのCDを聴いてみた。

ディスプレー部分の見え方。1行表示だが、遠くからでも視認性は高い。日本語表示はできないが、使いこなしでカバーできるだろう

 一聴して、見通しがよく、カッチリとメリハリの利いたサウンドであると感じる。オーディオ専用機と比較するとやや硬質に感じる面もあるが、ポップスやロックのベースは骨太でハッキリとした輪郭だし、ドラムもマッシブに前に出てくる。女性ボーカルにも雑味がなく透明感がある。筆者が現在使用している同クラスの製品(2年前の他社製)と比較した場合でも、S/N感が高く、最大音量時の残留ノイズが格段に少ない。AVアンプだが、これなら、音楽用に使っても十分楽しめそうだ。

 次にiPod。実は別売のドックからアナログ出力した音もそれなりにいいなと感じた。アンプ自体の質が高いためだろう。しかし、USBでデジタル出力した音との差は歴然だ。音量もデジタル接続のほうが大きい。目盛り-37~35dBぐらいで聴けるデジタル接続に対し、アナログでは5~6dB音量を上にしないといけない。

 アナログ接続では、全体にフォーカスがぼやけたような不明瞭感があり、音像も残響の表現も曖昧だ。ギターや琴を鋭く弾く音の立ち上がりも悪く、なまったような印象がある。ボーカルを担う中域はゆったりと聞きやすいが、高域のレンジは狭く、ややこもった感じがある。デジタル接続の効果は絶大という印象だ。



iPodのデジタル接続は、単品コンポに迫れるか?


 それではと、今度は単品のSACDプレーヤーと比較してみた。用意したのは、マランツの「SA-17S1」。接続は同軸デジタルケーブルと、アナログRCAケーブル(Ortofon Reference 7NX)の2種類を試している。

 当初はデジタル接続なら、音にほとんど違いが出ないだろうと予想していた。しかし、実際には認識できる程度の違いがあり、驚かされた。

マランツの「SA-17S1」。CDのほか、SACDのマルチチャンネル再生に対応しており、5.1chの出力も備える。2002年発売と若干時間が経っているが、発売当初は中級機の位置付けだった

 試聴したディスクを例に取るとバイオリン関連の楽曲を集めた「Ryu Goto」の10曲目「カルメン幻想曲」では、オーケストラの序奏の後、リズムを刻む鈴の残響にわずかな差があることに気付く(SA-17S1のほうが長く、奥行き間がある)。次にバイオリンのソロが始まるが、バイオリンの音色のハリも心なしかiPodのほうが足りないようだ。バイオリンに関しては、終盤のフラジオレットの表現にも差がある。

VSA-LX51付属のリモコン。スッキリとしたレイアウトで使いやすい

 バランスに関しては、iPodのほうが中域を重視(というか低域が音痩せする印象)。レンジ感もSA-17S1のほうが広い。このあたりの差はあまりないので、説明なく聴くと気付かないかもしれないが、静かな部屋でじっくり聞き込むと差はあるな、と感じる。

 ポップス系では、中島美嘉のベスト盤から「STAR」(2曲目)を聴いた。イントロからボーカルが始まり、バックでややうねった感じのギターが演奏されているが、このうねりの表現も若干甘い。微細な情報がどこまで拾えているかの違いだろう。

 音のバランスが中域に寄っているのは、こちらのほうが顕著で、iPodのほうがボーカル部分がより前に出てくる。ベースの見通し感などは悪くなるが、声そのものは聞き取りやすい。そういうチューニングなのかもしれない。

 総合すると、iPod単体でアナログ接続とデジタル接続を比較した場合は、圧倒的にデジタル接続が有利。SA-17S1のデジタル接続と比べると、SA-17S1のほうが、よりオーディオ的なHi-Fi志向のサウンドになる。iPodはそのあたりが弱いが、若干ではある。その差はほとんどなく、単品コンポと比べても遜色ないと言えると思う。

 ちなみに、SA-17S1のアナログ接続では、VSA-LX51の持ち味であるメリハリ感は若干薄れるが、逆に空間の広さや柔らかさといったSA-17S1のキャラクターが発揮されてくる。単品のコンポは、数値上の性能だけではなく、こういった雰囲気の調整にも力を入れている印象なので、単にデジタルで劣化の少ない伝送が可能になりました、というレベルではもの足りない印象になってしまうのかもしれない。



iPodオーディオの可能性を手軽に知るために最適


 また、今回はiPodとの接続に絞って紹介したが、本機はUSBメモリー内に保存した、著作権保護のないMP3、WMA、MEPG-4 AACファイルも再生できる。iPodより安価なUSBメモリーで、手軽にPC用のファイルを再生したい人には役立つだろう。

 AVアンプは、iPodとつなぐ機器としては現状でもっとも手軽。パソコンで管理しているライブラリーをAVシステムに入れるという観点では、パソコンそのものをアンプにデジタル接続したり、DLNAやWindows Media Connectなどのネットワーク技術を利用する手もある。しかし、接続の手間や楽曲のサーチしやすさなどを考えると、iPodを直結したほうが明らかにラクだ。PCオーディオとの連携の最初の一歩としては、かなり有力な選択肢になると個人的に考えている。

 後編では、SACDにiPod用の接続端子を装備したマランツの「SA8003」など、他社製品についても紹介する。

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