理由#1 必要と思ったのは私自身――1度限りの「公募」で誕生
―― UPシリーズはどれくらい前から開発していたんですか。
加藤 (プロジェクトを)開始したのは2000年なので、もう8年になります。HMDを作ろうというのはあったのですが、今とはレベルが違っていました。今回は表参道を使ったPRなどをしていますが、その発想は本当に最近になって出てきたものでしたね。
―― 8年前から、ニコンに「UP」のような出力デバイスが必要だという考えがあったということでしょうか。
加藤 「必要だ」と思ったのは会社より私自身ですね。当時の私はまだコンシューマ向けではなく、産業機器を担当していたんです。そのとき1度だけ「社内公募」というチャンスがあって、そこでアイデアが認められたんですね。結果的にその開発部署に入ることになり、今に至るという感じです。
―― 8年かけてまで開発したい、作りたいと思ったきっかけは何だったんでしょう。
加藤 純粋に普段「面白い」と思っていることをやってみたいな、と思ったんですね。(発表まで8年かかったのは)トレンドがどんどん新しくなっていくと、それより一歩先にいったものを開発しないとユーザーには受け入れてもらえないだろうと思ったんです。その(トレンドの)キャッチアップの製品化に時間がかかったというところですね。
―― 5年後には国内外で300万台出荷という目標を出されていますが、例えば韓国や中国などのアジア方面に期待をかけられているということはあるんでしょうか。その場合、テレビCFなど大型のキャンペーンを張られたり。
加藤 (アジア市場について)そうですね、興味はたしかにあります。でもまずは国内でどんな反応かを見つつといったところです。それからテレビCFは今のところ考えていません。テレビを見ている層に売るものでもないだろうと。ロングテールとショートヘッドの中間のようなところ、ミドルメディアとして色々なことができれば面白いと思っています。
その意味で今までの「テレビ」とはちょっと違うものになるのかなと。目標を出してはいますが、それよりまずは最初の5000台を買われた方を本当に大切にしたいと考えています。はじめに買われる方にはやはりイノベーターが多いと思います。