「松下の名を使っている会社は、全世界に180社。そのうち、国内が92社、海外が88社。また、32社ではナショナルの名称を使っていた。これらがすべてパナソニックに変わる」
全松下ブランド委員会の委員長を務めた牛丸俊三代表取締役副社長は、数字が書かれた手元の資料を見せながら、こう切り出した。
2008年1月10日の社名変更の発表以降、約半年間に渡って、すべてのグループ会社の社名変更、施設の名称変更などに関して、最終承認印を押したのが牛丸副社長である。
「はんこを押す右手が痛くなる」と冗談混じりに語るが、それだけ多くの会社が「松下」の冠を使っていた。
「今回の社名変更、ブランド統一は、グローバルなブランド力強化に向けて、全松下グループの結集が必要であり、全活動、全成果を、パナソニックの名のもとに結集することを目指したもの。グループがさらに強く結束することで、世界トップレベルのブランドを目指す。そして、パナソニックを光輝くブランドにしていかなくてはならない」と、牛丸副社長は、改めて社名変更、ブランド統一にかける決意の姿勢を見せる。
牛丸副社長は、「松下には4つの大きなブランドがあった」と語る。
ひとつは、社名である「松下電器産業」。2つめには、グローバルブランドである「パナソニック」。そして、3つめには日本市場向けの限定ブランドである「ナショナル」である。ここまでは、今回の社名変更、ブランド統一において、何度も繰り返し語られていたものだ。
ではもうひとつのブランドとはなにか。
最後に牛丸副社長が挙げたのが、創業者である「松下幸之助」だ。
経営の神様といわれ、経営に関する数多くの示唆を残した「幸之助」は、世界の経営者のお手本ともなっている。
とくに、中国における「松下幸之助」の名前の浸透ぶりは特筆される。
それだけに、「創業者の名も、当社にとって大きなブランドのひとつ」と、牛丸副社長が語るのも頷けよう。
だが、それは裏を返せば、創業者の名字である松下電器の名が無くなることは、今後、パナソニックと松下幸之助を、どう結びつけていくかという、新たな課題が生まれたといってもいい。
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